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【教育実践レポート】探究から研究へ~大学における専門的な学びへの橋渡し~

 

自分の関心を問いに変え、根拠となる情報を集め、考えを整理して伝える。こうした探究の経験を、大学での研究や専門的な学びにどうつなげていくか。

関西福祉大学(兵庫県赤穂市)では、「ブリタニカ探究総合パック」を活用し、社会福祉・保健教育・看護の3領域で試行的な教育実践が行われている。

ブリタニカ・ジャパンが教材活用を通じて協力するこの取り組みは、学生の学習過程や到達感を捉えながら、教育的な可能性と大学での活用を検討する取り組みだ。

2026年度前期の実践報告を紹介する。

探究のプロセスを、大学の学びに接続する

大学では、学生が自ら問いを立て、情報を収集・吟味し、他者と対話しながら考えをまとめることが求められる。

一方、入学までの探究的な学習には経験の違いがある。研究やレポート、卒業論文の進め方を、全ての学生が初めから理解しているとは限らない。

今回の実践が着目したのは、その進め方を具体的に示すことだった。

問いの設定、情報収集、整理・分析、発表、振り返りという過程を、実際の活動として経験する。情報源やシンキングツールを手がかりに、学生が自分の関心を整理し、次に何を調べ、どう考えるかを見通せるようにする。

「探究総合パック」は、それだけで大学の研究を完結させるものではない。

専門分野に応じた問いや資料を組み合わせ、高校までの探究経験と大学における研究・専門学習をつなぐ「接続教材」として位置づけられている。

学年と専門分野に合わせた、3つの実践

対象となったのは、3学科の1年生と3年生。学年や授業の目的に応じて、3回または5回のプログラムが組まれた。

社会福祉学部社会福祉学科では、3年生が5回の実践に参加した。

卒業論文の準備を見据え、自分の関心を明確にするところから、問いと仮説、調査方法の検討、情報整理、構想発表へと段階的に進めた。授業内だけで完結させず、授業外での調査や資料作成、必要に応じた個別相談も組み合わせている。

教育学部保健教育学科では、3年生を対象に3回実施した。

問いを立て、イメージマップなどを使って思考を整理し、最終発表につなげた。ここには、自ら探究する経験を得るだけでなく、教員を目指す学生が、将来の教育現場で探究的な学習をどう支えるかを理解するという、もう一つの目的がある。

看護学部看護学科では、1年生が3回の実践に参加した。

これまでの学びと自分の関心を振り返り、問いを設定して、文献検索、情報整理、プレゼンテーションを経験した。看護領域の具体的な問いの例を補助資料として示し、大学での学び方と専門内容の理解を結びつけている。

「何を学んだか」から、「次にどう学ぶか」へ

学生の振り返りには、知識を得たことだけでなく、自分の学び方への気づきも表れていた。

社会福祉学科では、文章に書き出すことと発表することの難しさの違いや、準備の不足に気づいたという声があった。次回は資料をより早く準備し、自分の卒論課題をさらに調べたいという、次の行動を考える振り返りも見られた。

保健教育学科では、スポーツの話題を異なる視点から捉えたり、他の学生の発表に対する質問を考えたりすることで、新たな学びやアイデアが生まれたことが報告されている。

看護学科でも、一つの言葉に関連する多くの文献があると知り、文献を使ってさらに調べたいという意欲が示された。

できたことだけでなく、まだ足りないことにも気づき、次の学習を考える。

こうした振り返りは、自分の理解や学習の進め方を振り返る「メタ認知的な意識・行動」につながるものとして捉えられる。

今回はメタ認知能力そのものの向上を直接測定したわけではないが、今後の検証につながる示唆となった。

学生の実感と教員の観察から、教育的な可能性を捉える

授業ごとの振り返りで学習の途中経過や支援上の課題を捉え、プログラム終了時の共通の振り返りで取り組み全体を通じた到達感を把握するため、大学側が学生アンケートによる評価を行った。

終了時の学生アンケートでは、参加者の87.5%からの有効回答を分析した。

8項目の質問への回答平均は4点満点で3.46点で、全回答に占める肯定的な回答(「非常にそう思う」「そう思う」)の割合は91.7%だった。

特に、研究テーマの背景や関連分野の理解、主体的な取り組み、今後のゼミ・卒論への活用意欲について、肯定的な評価が得られた。

担当教員からも、学生の問いや思考の質、授業内の議論の活性化について肯定的な評価が寄せられた。

一方、教材と授業の適合性については、専門分野や授業時間に応じた調整の必要性も示されている。

また、今回は少人数による試行であり、学生の自己評価と教員の観察を通じて、実践の可能性と改善点を確かめるための結果として受け止める必要がある。

専門文献へ進むために、どのような支援が必要か

大学の学びへの接続という点では、次の課題も見えてきた。

学生の評価では、専門書・論文を読む前段階としての有用性や、研究課題の位置づけへの意識は、他の項目と比べて相対的に低かった。

基礎的な情報からテーマの見通しを得ることと、先行研究を踏まえて自分の研究課題を定めること。その間をつなぐ支援を、さらに充実させる必要がある。

大学で「探究総合パック」をさらに活用するためには、専門分野に即した問いの例や資料の充実と、教材を入口に論文検索サービス、公的統計、専門書・論文へと進む道筋を用意することも重要になってくる。また、ワークシートを埋めること自体が目的にならないよう、活動の意味を振り返ることも大切だ。

授業時間の設計に関しては、3回の実践では問いの形成から発表までを集中的に経験できる一方、文献を吟味し、問いを深め直すには追加の支援が求められる。5回の実践でも、調査や資料作成を授業内だけで終えることは難しいため、授業外学習と個別支援を組み合わせていく必要がある。

教材の全体を一律に使うのではなく、学生の研究段階や授業の目的に合わせて必要な部分を選ぶ。大学教育での活用には、こうした授業設計が欠かせない。

実践を重ね、大学での学びを支える仕組みへ

2026年度後期には保健教育学科の教職研究科目で次の実践が行われ、学年や実施時間の違いを踏まえ、専門学習への接続と、学生が自分の学びを振り返る機会のつくり方が検討される。

今後は、開始時と終了時の変化を捉える評価や、問いの具体性、根拠の質、説明の一貫性などに着目した成果物の評価も検討されている。

学生の学習成果に加え、教員の授業設計や支援の負担、継続のしやすさも確認しながら、目的に応じた実践を積み重ねていく方向だ。

探究から研究へ。

その接続を支えるのは、教材を使うことだけではない。専門領域に即した問い、信頼できる情報へのアクセス、他者との対話、そして自らの学びを見直す機会を、授業の中にどう組み込むか。

関西福祉大学の試みは、学生が自ら学びを組み立てていくための支援の在り方を探る取り組みである。

 

【本取り組みについて】

本実践は、関西福祉大学とブリタニカ・ジャパン株式会社との協働により、「ブリタニカ探究総合パック」を試行的に活用して実施したものである。

ブリタニカ・ジャパン株式会社は教材提供及び教材活用に関する支援を行った。

授業の設計・実施、学生の振り返り、集計・分析及び実践結果の検証は大学側が行い、これらの評価・検証過程にブリタニカは関与していない。

本記事では、教材活用による成果だけでなく、実践を通じて明らかになった課題を含めて報告している。

 


ブリタニカ総合探究パックは、高等学校や大学など教育機関で利用されている探究学習教材です。