
探究学習では、生徒が主体的に考え、調べ、時に対話しながら学びを深めていく。
しかし、その一方で教員には、教材準備やワークシート管理、提出物の確認など、多くの運営業務が発生する。
こうした課題に対し、静岡県立藤枝東高等学校では2026年度より、昨年度より活用してきた「ブリタニカ探究総合パック」を「ClassPad.net※1」上で活用する探究授業をスタートした。
実際の授業ではどのような変化が起きているのか。担当する高橋先生に話を伺った。

取材当日、高橋先生は中継室から7クラスへ同時に授業を配信していた。
各教室には担任教員が入り、端末や機材の確認、生徒のサポートを担当する。
テーマは「探究入門」。情報リテラシー、とりわけ生成AIとの向き合い方について学ぶ授業である。
生徒たちはブリタニカの記事を読み、そして「生成AIを使いこなせる人とはどのような人か」という資料をもとにグループで議論し、自分の考えをClassPad.netの付箋機能へ入力していく。
教室には紙の模造紙も付箋もない。画面上には次々と色分けされた付箋が並び、生徒同士が「いいね!」を送り合いながら考えを共有していく様子が印象的だった。
昨年度は「ブリタニカ探究総合パック」のみを利用していた藤枝東高等学校。
教材の内容には十分満足していたというが、授業運営には課題が残っていた。「DXハイスクールなのに、実際には模造紙や付箋、ワークシートを大量に印刷していました。探究では準備物も多く、運営面の負担が大きかったのです。」
そこで今年度からClassPad.netを組み合わせることで、授業全体をデジタル化した。
その結果、オリエンテーションではワークシート17枚をデジタル化することで、約5,000枚の紙削減につながった。
また、模造紙やポストイットの準備・配布・管理も不要となり、授業運営の負担が大きく軽減された。
教材配布から提出、共有までを一つの環境で完結できるようになり、従来必要だった授業回ごとの資料管理も不要となった。
活動履歴もそのまま蓄積され、探究のプロセス全体を効率的に把握できるようになった。
高橋先生は、昨年度から継続利用しているブリタニカ探究総合パックについて「百科事典は、探究をする上でのインプット教材として非常に優れている」と評価する。
「何より、情報の信頼性が高い。『嘘が書いていない』という安心感があります。」
探究では情報収集が出発点になる。
「土台となる情報の質が高いことで、生徒は情報の真偽を心配することなく、考察や議論に時間を使うことができます。」
昨年から利用している生徒は、自発的に自分の興味のある分野について調べたりする姿も見られたという。
「探究では『考えるための材料』が重要です。その材料としてブリタニカは非常に優秀だと思います。」また、探究にかかわらず、歴史総合では年表、地理では最新統計や各国情報など、教科横断で活用が広がっている。
さらに探究総合パックが今年度よりリニューアルされた点についても、「サイト構成がシンプルになり、ほしいものを探しやすくなった」「共通ワークシートでテーマを問わず使えるようになった」「探究実践ハンドブックや報告書の追加によって、探究がやりっぱなしにならず、総合型選抜にもつながる」と高く評価した。

高橋先生がClassPad.netを使うことで最も大きな変化として挙げたのは、「活動の履歴」が残ることだった。
従来は提出物といった結果の把握が中心だったが、現在は生徒の思考や試行錯誤といった“過程”まで把握できるようになった。
「以前はGoogle Classroomも使っていましたが、ClassPad.netは双方向のやり取りや、生徒の活動過程が見えます。毎時間の感想も蓄積できるので、生徒がどう考え、どう成長したかを追えるようになりました。」
探究では、完成した成果物だけではなく、試行錯誤のプロセスこそ重要である。
その過程が自然にアーカイブされることで、生徒自身も学びを振り返りやすくなり、教員も評価しやすくなったという。
また、付箋機能は発言が苦手な生徒にも大きな効果を発揮している。
教室で手を挙げなくても、自分の考えを文字で表現できる。
「いいね!」機能により意見のやり取りが活性化し、生徒の参加度も向上した。発言が苦手な生徒も参加しやすくなり、主体的な学びにつながっている。また紙資料がなくなり、学習環境も改善された。
さらに付箋の色を使い分ければ、Yes/Noのアンケートなら、瞬時に回答が色でわかる。
紙では難しかった集約も、デジタルなら直感的に行えるようになった。
ClassPad.netの導入効果は、コスト削減にもつながる。
模造紙や付箋の購入費用や、印刷、配布、回収、保管といった事務作業が減り、その分、生徒一人ひとりを見る時間が増えた。
「授業中に教員が歩き回って様子を見たり、声を掛けたりする余裕が生まれました。また、学校ではカラー印刷が難しいため、従来は地図や統計資料も白黒で配布していました。
しかし現在は、生徒が端末上でカラー資料を閲覧し、そのまま図や地図へ直接書き込めるようになったので、視覚的な理解が深まり『授業が楽しくなった』と感じる生徒も増えています。」

企業や地域とのコラボレーションによる探究学習は非常に有意義ですが、同時に「手法がわからない」「実践的なスキルが定着しない」というジレンマも抱えています。
「企業連携や地域課題解決型の探究学習において、多くの場合、リソースはあっても「探究の進め方」という基礎が抜け落ちてしまいがちです。その結果、本来必要なはずの「PDCAサイクルを回す力」が身につかず、一過性の活動で終わってしまうケースが少なくありません。」と髙橋先生は続けます。
「ブリタニカ探究総合パックを使うことで、この課題は解決できます。企業連携探究や地域課題解決型探究の前に、やり方を身につける、または次の学年でより深い個人探究に入っていく前に、探究のやり方を一通りやり直す、といった使い方をすることで、次へとつながる「自走する力」を育むことができます。」
今後について尋ねると、高橋先生はさらに大きな展望を語ってくれた。
「ClassPad.netを使えば、中継で他校とグループを組んで探究を進めていくこともできると思います。同じようにブリタニカ探究総合パックを使っている学校同士でコラボレーションできたら、とても面白いですね。」
ブリタニカ探究総合パックで『信頼できる情報』を支え「PDCAの回し方」を身につける。
そしてClassPad.netが『生徒の主体的な参加』を促し『思考の過程』を可視化する。
その相乗効果によって、探究学習は「準備が大変」な授業から、「生徒中心」の学びへと変わり始めていた。
探究DXとは紙をなくすことではなく、教師が伴走車として生徒と向き合う時間を取り戻すこと。その実践が藤枝東高校には確かに存在していた。