児童・生徒が主体的に学習するアクティブラーニングが重視されるなかで、注目度を高めているのがルーブリックです。ルーブリックは従来のペーパーテストとは一線を画しているため、詳細を把握できていない先生方も多いでしょう。そこでこの記事では、ルーブリックの概要やメリット、作成の流れなどを解説します。
ルーブリックとは、学習目標の達成度を判断するために使用する評価ツールです。評価の項目や尺度、基準を一覧で示します。項目ごとにどのレベルに達すると高い評価を受けられるのかについて、明確に示せることがルーブリックの特徴であり、客観的な指標を用いて児童・生徒を具体的に評価できることがメリットです。
ペーパーテストは、採点基準を厳密に定めていることが特徴です。一方のルーブリックは、マトリクス表を使用して、評価の項目やレベルを明確に示します。
従来のペーパーテストには、評価できる範囲が狭く、児童・生徒のやる気を引き出しにくいといったデメリットがありました。しかし、ルーブリックは児童・生徒を客観的かつ具体的に評価できます。ルーブリックは児童・生徒にも情報を示すことを前提とするため、評価の認識を共有できるほか、偏った評価になるリスクを減らせることもメリットです。
ルーブリックは、絶対評価の基準表としてアメリカで開発され、1990年代から教育現場に導入されました。日本においても、相対評価から絶対評価に方針が改められた2000年代から徐々に浸透し、明確な評価基準を用いるうえで必要な評価ツールとして徐々に浸透しています。
昨今では、文部科学省による学習指導要領において、児童・生徒が主体的・能動的に学習するアクティブラーニングが重視されるようになったことも、ルーブリックへの注目度が高まった理由のひとつです。グループワークや調査学習といった学びを評価するうえで、ルーブリックは大いに役立つと考えられます。
ルーブリックを活用するメリットとして挙げられるのは、主に次の3つです。それぞれのポイントを解説します。
<ルーブリックを活用するメリット>
・評価基準がわかりやすく評価の不平等性が少なくなる
・不足している要素の解明や学習改善につなげやすい
・学習意欲向上につながりやすい
ルーブリックのメリットは、評価基準を明確にでき、不平等性を減らせることです。評価の基準を一覧表で示せるため、ほかの先生とも同じ観点で児童・生徒を分析し、同じ尺度で評価できます。
英語なら英語を、国語なら国語を担当する先生同士が評価基準について話し合い、協働で作成したルーブリックを活用すると、クラスの垣根を越えて公平性の高い評価を行えるでしょう。指導の足並みもそろえられるため、校内研修で取り上げるテーマにも適しています。
不足している箇所を分析し、学習の改善につなげやすいこともメリットのひとつです。事前に定めた基準に沿った適切な評価を児童・生徒に伝えられるため、先生は具体的なフィードバックを送りやすいでしょう。児童・生徒自身も、ルーブリックを見ながら現状を認識し、学習改善につなげられます。
ルーブリックは鏡のようなものです。課題との向き合い方をルーブリックに照らし合わせると、自分の強みや弱点が見えてきます。課題が明確化すると、具体的な改善策が見えやすくなり、主体的な学びにもつながりやすいです。
児童・生徒が目標への進捗を具体的に確認できるため、学習意欲向上につながりやすいこともルーブリックを活用するメリットです。先生が児童・生徒の足りない部分や補いかたについて明確に示すことにより、目標達成に向かうやる気を引き出し、学ぶ意欲を高めるきっかけになります。
ルーブリックには先述したメリットがありますが、一方で活用にあたっての課題も存在します。以下3つのポイントについて、対処法を併せてわかりやすく解説しましょう。
<ルーブリックの活用にあたっての課題>
・作成自体のハードルが高い
・評価の一貫性を保つ必要がある
・生徒目線で理解しやすい内容を意識する必要がある
初めてルーブリックを作成する場合は、評価基準の選定などに長い時間を要する可能性が高いです。また、学習指導要領が改定された場合は、教科や単元の目標を確認し、どのような手順で児童・生徒を目標達成に導くのか、内容を見直しながら再検討しなければなりません。
対処法として有効なのは、先生がチームを組んでルーブリックを分担作成することです。ICTの活用による効率化や、3段階評価などシンプルなルーブリックから始める簡略化も、先生の負担を軽減する有効な対処法になります。
同じ教科や学年において、児童・生徒を評価する先生が複数名存在する場合は、評価の一貫性を保つための工夫が必要です。先生ごとに異なる評価基準を用いると、児童・生徒を公平に評価できません。先生同士で話し合いを行い、一貫性のある共通したルーブリックを作成する必要があります。
対処法としては、評価基準の具体化や、児童・生徒による自己評価・仲間評価の導入が効果的です。例えば「声の大きさや聞き取りやすさ」を評価順として明文化しておくと、客観的で公平な評価を下せます。児童・生徒に自己評価させ、先生との評価を比較する対策も有効でしょう。
生徒・児童の主体性と意欲を引き出すためには、理解やすい内容のルーブリックを作成する必要があります。
学習の目的を双方が共有できなければ、先生は「指導内容に付いてこない」、児童・生徒は「想定していた内容と違う」といった問題が起こりやすいです。そのため、児童・生徒の意見も取り入れながら評価基準や教育目標を決めることにより、児童・生徒にとってわかりやすい指導を行えます。
ルーブリック作成の流れについて、3つのフェースに分けて解説します。
1 評価項目を決定する
ルーブリックの一番左の列に記入する「評価項目」を決定します。これは、児童・生徒が達成すべき具体的な目標です。最新の学習指導要領では「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に取り組む態度」という3つの観点が重視されており、指導と評価を一体化する必要があります。
2 評価尺度を決定する
次にルーブリックの上段に記入する「評価尺度」を決定します。これは、学習達成度の進捗を示すことにより、児童・生徒がステップを踏みながら目標達成を実現するためにものです。評価尺度は「S(よくできる)」「A(できる)」「B(もう少し頑張ろう)」など、いくつかの段階に分けて評価します。
3 評価基準を決定する
先述した評価項目と評価尺度がクロスする部分に記入する「評価基準」を決定して、ルーブリックを仕上げます。これは、評価の尺度に合わせて学習の質を向上させるために重要な基準です。「足りないものは何か」「評価を高めるために何を改善するべきか」について、児童・生徒がわかりやすい評価基準にしましょう。
ルーブリック導入にあわせてICT教材を活用することにより、授業の評価や学習の質を向上させることが可能です。グループワークや調査学習をサポートするICT教材と、それらの学びを評価するルーブリックは親和性が高く、相乗効果をもたらします。
日本国内の中学校では、ルーブリックを活用したパフォーマンステストを取り入れて、スピーキングテストの一種であるスピーチ・プレゼンテーション活動を行った具体例もあります。活動後に実施したアンケート結果によると、「はじめのころと最後のほうで何かあなたに変化があったか」との設問に対し、生徒の半数以上が「やや」「とても」と回答しており、学習者が手ごたえを感じていることがわかりました。
ルーブリックとは、学習方法や進捗を示す評価ツールのひとつです。アクティブラーニングが推奨されるなかで注目度を高めており、評価の不平等性を減らせることや、学習意欲向上につながりやすいことがルーブリックのメリットといえます。
ルーブリックを導入する際は、ルーブリックとの親和性が高いICT教材の併用がおすすめです。ブリタニカ・ジャパンでは、質の高いグループワークや調査学習を後押しするICT教材を取り扱っています。ルーブリックを活用した指導の質を高めるために、ぜひ当社のICT教材をご活用ください。
ブリタニカ・スクールエディションは、小学校、中学校など教育機関で利用されているオンライン百科事典です。