世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」をうまく巡るには…

  • ブリタニカ・ジャパン

 

2018年7月「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がユネスコの世界文化遺産に登録されました。

構成資産は長崎と天草地方に点在する12資産。それぞれが ① キリシタン潜伏のきっかけとなった歴史→② 迫害されながらも潜伏して信仰を実践した歴史→③ 共同体を維持するためキリシタンたちが離島に移住した歴史→④キリスト教禁制が解かれ潜伏が終わりを告げた歴史、の4段階のいずれかに含まれるものとして位置づけられています。

この歴史の流れにしたがって資産をぐるり巡れば、潜伏キリシタンたちの残した歴史的資産の、「世界遺産World Heritage site)」としてのゆるぎない価値を、私たちは深く認識することになるでしょう。

…とはいえ、あの島原の乱(1637~38)の舞台となった原城跡に始まり、密かに信仰が守られた平戸島北西の集落、天草下島崎津集落、長崎市外海の出津・大野集落、信徒たちの移住先となった野崎島(小値賀町)の集落跡、頭ヶ島(新上五島町)、奈留島久賀島(以上4島は五島列島)、佐世保市沖の黒島の集落、そして外国人宣教師による「信徒発見」で禁制撤廃(1873)のきっかけとなった長崎市内の大浦天主堂までの構成資産を、順繰りに旅するとなると、それはそれは大変なこと。そもそもすべての地に足を運ぶこと自体が無理(平戸市沖の無人島、中江ノ島は上陸不可)なのです。さらに、約半数の構成資産が離島にあるため、たとえば東京発の一度きりの旅で効率のよい動線を描くことは、交通事情などの点から非常に困難なのです。

それでも、青海を望む入江や沿岸の高台、離島などにたたずむ凛とした美しい教会堂を、是非一度はこの目で見てみたいもの。となると、教会の建築デザインへの興味でも、ついでに巡る現地の食への関心でも、なんでもいいので、目的を絞って、1ヵ所あるいは数ヵ所の資産を訪れてみてはいかがでしょうか?(教会内部の見学には事前連絡が必要です)。しかも長崎・天草地方には、世界遺産でなくても、キリスト教遺産として価値の高い美しい教会が点在しており、近隣にあるそれらを旅のコースに盛り込むこともできます。(ちなみに、長崎観光連盟作成のながさき旅ネットでは教会巡りのモデルコースがいくつか紹介されています。)

ImageQuest/MIDDLE TEMPLE LIBRARY/SCIENCE PHOTO LIBRARY

忘れてならないのは、私たちが目にする教会は、230年あまりに及ぶ潜伏キリシタンの苦難の歴史のほんの最終章、つまり禁制が解かれて潜伏が終わりを告げた時期に建ったものであるということです(上記の④にあたります)。そのことを心得ておくのと、いないとでは、大きな隔たりがあると思います。なお、解禁前の歴史を伝えるものとして、古い墓碑・墓地や殉教地跡などの遺構、信心具等の遺物を見学することも一部でできます。

見たものを「見たよ」で終わらせない工夫……世界遺産の価値を体感するにはやはり事前準備が不可欠。旅を始める前に、長崎県世界遺産課作成の「世界文化遺産 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を一読されることをお勧めします。

また、潜伏以前(フランシスコ・ザビエルFrancis Xavier)による布教開始から禁制まで)を含めたキリシタンの歴史や文化、日常生活、さらに日本へのさまざまな影響を包括的に知るために、ブリタニカ・オンライン・ジャパンの「キリシタン」やBritannica Schoolの「Christianity」もどうぞご参考に。


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