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アダプティブラーニングとは?メリットと注意点、現状の課題などを紐解く

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高校などの教育現場を筆頭に、企業でも注目度を高めている学習スタイルが、アダプティブラーニングです。アダプティブラーニングはすぐにでも着手すべきといわれますが、導入によるメリットや注意点が何なのか、疑問に感じている先生も多いでしょう。そこでこの記事では、アダプティブラーニングの概要や、現状の課題などをわかりやすく解説します。

アダプティブラーニングとは?

アダプティブラーニング(Adaptive Learning)とは、生徒一人ひとりに対して最適化した学習を提供することにより、効率的かつ効果的な学びを実現する学習スタイルです。新学習要領に適した学習の手法として、文部科学省もアダプティブラーニングを推奨しています。

従来型の学習スタイルは、生徒全員が一つのカリキュラムを同じ順番で学んでいました。しかし、生徒によって理解度や弱点が異なるため、一律化された学習プログラムが必ずしも適切とは限りません。

そのような従来型の学習スタイルの弱点を克服できる、新しい学習スタイルとして注目されているのがアダプティブラーニングです。アダプティブラーニングでは、生徒の学習進捗やテストの正誤情報などを分析し、個々の特性を把握することにより、必要な学習の内容を自動的に抽出して提示します。

アダプティブラーニングを知るうえで覚えておきたい「EdTech(エドテック)」とは

EdTechとは、科学情報を活用して教育の効果を向上させる取り組みです。EdTechは「Education(教育)」と「Technology(技術)」という2つの英語を掛け合わせた造語です。この2つを統合したEdTechは、新しい教育サービスやビジネス領域として注目されています。

文部科学省が2018年に公開した「Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性」では、EdTechについて「教育におけるAI、ビッグデータ等の様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」と位置付けています。そのうえで、すぐにでも着手すべき課題の一つとして挙げているのが、アダプティブラーニングです。

アダプティブラーニングがもたらすメリット

アダプティブラーニングは、生徒に以下のようなメリットをもたらすと考えられています。

<アダプティブラーニングがもたらすメリット>

・生徒それぞれの個性を伸ばすことで学習効果向上が期待できる

・個性と学習内容の可視化による指導品質向上

・過去の学習データを状況に応じて活用し導くことができる

・教育内容や品質の均一化とコスト削減が図れる

・教材・指導内容自体の改善も期待できる

それぞれのポイントを確認しましょう。

生徒それぞれの個性を伸ばすことで学習効果向上が期待できる

アダプティブラーニングは、従来型の一斉指導とは異なり、生徒の進捗や苦手・得意分野に合わせた学びを支援する学習スタイルです。生徒自らが得意に気付き、個性を伸ばしながら成功体験を重ねることにより、学習のモチベーションを高めやすいでしょう。そのため、学習効果向上が期待できます。

個性と学習内容の可視化による指導品質向上

先生が指導品質を向上させられることも、アダプティブラーニングのメリットです。アダプティブラーニングではICTを活用するため、生徒の得意分野だけでなく、苦手分野も分析できます。生徒自身や先生が自覚していない苦手分野を可視化することにより、弱点を解消するための指導を提供しやすくなるでしょう。

過去の学習データを状況に応じて活用し導くことができる

生徒ごとの学習データを蓄積することに加えて、ほかの生徒や、成績が優秀な生徒の行動・特性を基にした分析が可能なことも、アダプティブラーニングのメリットです。生徒の進捗を相対的に比較することにより、どの生徒がどの部分でつまずいているのかを確認し、素早くフォローできます。

教育内容や品質の均一化とコスト削減が図れる

アダプティブラーニングは、客観的なデータを活用して学習方法を提示できるため、先生による指導力の差異が生じにくく、教育内容や品質を均一化できます。これにより、先生のスキルアップを目指すために必要な研修コストを削減できることも、教育現場全体にとってのメリットです。

教材・指導内容自体の改善も期待できる

アダプティブラーニングを活用すると、教材や指導内容自体の改善も容易です。アダプティブラーニングでは、過去の学習内容が生徒の学力向上にどのくらい寄与したかも、分析できます。効果的だった指導はそのまま残し、課題が残る指導を見直すことによって、より質の高い指導を提供できるでしょう。

アダプティブラーニングの持つ注意点・課題

アダプティブラーニングには多くのメリットがある一方で、以下の3点は注意点・課題として指摘されています。

<アダプティブラーニングの持つ注意点・課題>

・学習環境整備のハードルが高い

・モチベーションの維持は個々に委ねられる

・分野によっては最適解にはなり得ない可能性がある

それぞれのポイントを確認しましょう。

学習環境整備のハードルが高い

アダプティブラーニングの実施には、ICT環境の整備が不可欠です。文部科学省によるGIGAスクール構想の成果もあり、タブレット端末や高速インターネット環境の普及が進みました。しかし、各家庭内においては経済格差もあり、学習環境が完全に整備されていないことは課題といえます。

また、生徒や先生、保護者のITリテラシーが不足する傾向にあることも、アダプティブラーニングのハードルを高めている原因のひとつです。

モチベーションの維持は個々に委ねられる

アダプティブラーニングは、従来型の一斉指導と比較して自由度が高く、モチベーションの維持は個々の生徒に委ねられます。生徒によっては、勉強に対する集中力を保てない場合があり「やる気が出ずに勉強をしなかった」「苦手分野を認識したものの、後回しにしたせいで課題を克服できなかった」といった問題が発生する可能性もあるでしょう。

分野によっては最適解にはなり得ない可能性がある

アダプティブラーニングは、分析したデータを活用する学習プログラムのため、分野によっては不向きです。例えば、コミュニケーション能力などのソーシャルスキルを伸ばすための指導法としては、最適解になり得ない可能性があります。アダプティブラーニングの導入時には、学習内容との相性を確認しておきましょう。

教育現場以外でもアダプティブラーニングは注目されている

アダプティブラーニングが注目されているのは、高校などの学校だけではありません。実際に「ITパスポート試験」においても、アダプティブラーニングに関する設問が用意されています。企業主導で、社会人を対象としたアクティブラーニングも実施されているため、いくつかの事例を見てみましょう。

・JR西日本

西日本旅客鉄道(JR西日本)では、運転マニュアルのペーパーレス化などを目的に、アダプティブラーニングを導入しています。同社は、アダプティブラーニングの導入後に、職員の学習意欲が向上したと述べており、大きな手ごたえを感じているようです。

・三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行では、社員ごとの苦手分野を分析し、苦手を解消するための問題を出題するために、アダプティブラーニングを導入しています。銀行業務にはさまざまな知識が求められますが、アダプティブラーニングにより、学習者に合った範囲と速度の学習ができ、大々的な研修を避けつつ社員の理解度を深められたようです。

・株式会社大分銀行

株式会社大分銀行では、社員の研修にアダプティブラーニングを導入しました。金融業界向けの財務分析の知識を深めることを主な目的としており、すでに財務資格や税務資格を持つ社員からも、知識の定着に役立ったと好評を得ています。

まとめ

アダプティブラーニングとは、生徒一人ひとりに最適な学習を提供し、効率的かつ効果的な学びを実現する学習スタイルです。生徒の個性を伸ばすことにより、学習効果向上が期待できるほか、個性と学習内容を可視化して、指導品質を向上させやすいことなどがメリットといえます。

ブリタニカ・ジャパンでは、生徒の興味・関心を高められるICT教材をご用意しました。アダプティブラーニングを成功させるために重要なのは、生徒のモチベーションを維持することです。当社の使いやすく、わかりやすいICT教材を導入していただくことにより、アダプティブラーニングの品質向上にお役立ていただけます。