【探究・知識を深める】早すぎる梅雨明け

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2022年6月15日、東北地方を最後に日本全国の梅雨入りが発表され(梅雨がないといわれる北海道を除く)、マスメディアなどが、近年多発する停滞前線に伴う大雨や浸水、地すべり斜面崩壊などの土砂災害に注意を喚起しはじめたと思いきや、6月27~29日には早くも、ほぼすべての地域で梅雨明けが宣言されました。

気象庁の発表(速報)によると、6月6日頃に梅雨入りした関東甲信では、前年より19日、平年より22日も早く梅雨が明けたそうです。肩透かしを食わされたどころか、今度は入れ替わって訪れた、この時期としては異常ともいえる高温に身も心も備えなければならなくなりました。

このたびの異常高温の原因は、東太平洋のエルニーニョ監視海域(北緯5°から南緯5°、西経150°から西経90°の矩形の海域)での海面水温が平年より低い状態が半年~1年程度続くラニーニャ現象によるものとみられます(海面水温が高い状態の場合はエルニーニョ)。ラニーニャの影響下、西太平洋のインドネシア付近では、吹き込んでくる強い東風により多くの積乱雲が発生し、そのため北半球中緯度付近のチベット高気圧が勢力を強めて偏西風を北上させます。それに伴って、太平洋高気圧が日本付近に張り出して梅雨前線を北に押し上げます。いわゆる夏の気圧配置が、1ヵ月近くも早めに到来したわけです。

ラニーニャの影響を受けた日本の夏季(6~8月)は、北日本・東日本を中心に気温が高く、西日本の太平洋側および沖縄・奄美地方を中心に雨が多くなる傾向があるようです。

ひと雨ごとに美しく彩られるアジサイも急に干からびてしまいそうな、活動中のカタツムリもすぐさま休眠してしまいそうな早めの梅雨明け。コロナ禍により2年連続低調だった、移動や観光の復活が期待される2022年夏の到来となりそうですが、猛暑による熱中症の増加、雨の少なかった地域では水不足の懸念、電力逼迫、さらにはウクライナ情勢などを反映しての資源・食糧不足、物価高……。

大気の動きが地球規模であるように、生活の心配事も地球規模。とはいえ、閉ざされた生活を強いられたコロナ感染拡大の間、私たちは生活パターンを見直し、工夫に工夫を重ねて難局を乗り切ろうとしたはずです。日々、コロナの感染者数に注意を払ってきたように、毎日の天気や気温、そして国内政治や国際情勢にもきちんと気にとめて、命や生活をしっかり守れるようにしたいものですね。


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