【導入事例】東京女学館高等学校 様

 

小中学校の「1人1台端末」から始まったGIGAスクール構想は、高校での端末整備にも及び、ICT活用も「日常的な活用」や「学びを促進させる道具としての活用」といった段階に進んでいる。その際、児童生徒が自由に使える端末とともに、授業の目的に適したデジタル教材を組み合わせることで、大きな効果を上げている事例も増えてきた。そのひとつが、2016年度よりiPadを導入している東京女学館高等学校だ。同校では、デジタル教材の「ブリタニカ・オンライン中高生版」を全校的に活用することで、授業や部活動などで生徒主体の学びや協働的な学習を実践している。本稿では、高校1年生の国際学級における英語の授業で行われた、校内模擬国連がテーマの教科横断的な活用事例を紹介する。

東京の私立女子校として人気の高い、東京女学館高等学校

英語を軸にした教科横断型授業を実施

東京都渋谷区広尾にある東京女学館中学校・高等学校は、2023年に創立135年を迎える私立の伝統ある女子校だ。中学からの6年間一貫教育を行っており、一般学級と国際学級を合わせて約1400人の生徒が在籍している。

ICTについては2016年度から段階的にiPadの導入をスタート。現在は全学年の生徒へ整備され、授業を中心に学校生活のさまざまな場面で活用されている。

同校では、2004年度から新たに国際教育に主軸を置いた国際学級が設置された。国際学級の授業はすべて英語で行われており、6年間で実践的な英語力や国際理解を身につけ、リーダーシップの育成を目指す。北米型「Language Arts」をベースにした授業を特徴としており、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通して考察を深め、論理的思考力、クリティカルシンキングのスキルの育成にも注力している。

イングリッシュキャンプやボストン研修など、国際学級ならではのグローバルな行事が全学年にわたって用意され、高校2年生は毎年テーマを決めての校内模擬国連を実施するほか、英語では他教科と連携した教科横断型の授業が行われている。

今回、取材を行った高校1年生の英語の授業のテーマも「模擬国連」で、校内模擬国連を行う2年生を取材する「メディア」を担当するというものだ。それぞれの生徒がいずれか1カ国のメディアを担当し、取材対象となる国について調べた上で取材内容を考えていく。

国際学級は各学年1クラスのみだが、英語の授業は経験やレベルに即した少人数制となっており、この日は20人ほどの生徒が授業に参加していた。授業を担当しているのは、国際学級主任のクリスタル・ブルネリ教諭。アメリカの教育現場での指導経験を持ち、国際学級の設立にも携わってきたという。

すべて英語で行われる、国際学級の授業の様子

生徒は、校内模擬国連のメディアとして、4つの地域に属するいずれかの国を担当する。今回は「アメリカ」「ヨーロッパ」「アフリカ・中東」「アジア・オセアニア」と4つの地域に分けられており、担当する国はくじ引きで決定された。

国が決まった後、ブルネリ教諭が「Getting to know your country」と呼びかけ、各自が担当する国について調べる時間となった。

自分の英語力に応じてレベルを調整できるデジタル教材

ここで活用されたのが、同校でiPadとあわせて導入された「ブリタニカ・オンライン中高生版」だ。

ブリタニカ・オンライン中高生版には、日本語の「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」と、英語の「Britannica School」という2つの百科事典、さらに著作権処理済の画像データベース「Britannica IMAGEQUEST」が収録されている。オンラインで閲覧でき、インターネット環境さえあれば、端末の種類を問わずWebブラウザから利用可能だ。いずれも専門家が執筆・編集をしており、信頼性のある最新の情報を入手することができる。

iPadのブラウザから閲覧できるブリタニカ・オンライン中高生版

生徒の一人、R.Nさんはオセアニアにある小国ツバルの担当となった。まずは、Britannica Schoolを使って、人口や首都などを調べるところからスタート。

「最初は国の基本情報を調べて、たくさん載っている図や写真から情報をどんどん集めていきました」(R.Nさん)

国際学級 高校1年生のR.Nさん。SDGsや起業にも興味があり、「将来は人種差別や経済格差といった課題を解決する仕事を目指したい」という

その際、重宝したのがBritannica Schoolに用意されている「Elementary」「Middle」「High」の3段階のレベルだ。それぞれ英語圏の小学生・中学生・高校生向けのレベルに設定されており、自分の理解度に合わせて3つのレベルを自由に切り替えることができる。R.Nさんも「少し内容が難しいと思ったらレベルを下げて、もっと詳しい情報を知りたいと思ったら上げる」といった使い方をしていた。

英語力に合わせて3段階のレベルを自由に切り替えられる

一方、ポルトガルを担当したY.Tさんは、基本情報を調査した後、経済についてじっくりと調べていった。「産業や経済を調べる際は数値が重要ですが、Britannica Schoolには細かい数値やグラフも掲載されていました。また、2021年の最新データだけでなく過去のデータも用意されていたので、近年の変化を比較できた点もよかったです」(Y.Tさん)

同じく国際学級 高校1年生のY.Tさんは弁護士志望。「中学入学時は苦手だった英語の理解が年々深まっていくのが楽しい」と話してくれた

さらに「国について調べる際、インターネットではいろいろなサイトを探し回らないといけないのですが、Britannica Schoolには各国の基本情報から最新のニュースまで細かく掲載されているので、スムーズに調べられました」と、使いやすさを語ってくれた。

写真や動画の資料も豊富なBritannica School

30分ほど個人で調べた後、同じ国や地域を担当する生徒同士が情報を交換し、取材に向けて打ち合わせなどを行った。

iPadを見ながら打ち合わせを行う生徒

生徒たちは、調べる際にはiPadとBritannica Schoolをフル活用した上で、情報をまとめる際には用意されたプリントに書き込んでおり、デジタルとアナログをシームレスに活用している姿が印象的だった。

Britannica Schoolで調べた内容をプリントに書き込んでいく

幅広い授業で活用できるブリタニカ・オンライン中高生版

ブリタニカ・オンライン中高生版は、百科事典と学習コンテンツを収録したオンラインのデジタル教材だ。各分野の専門家によって執筆された、日英合わせて29万以上の項目が掲載されている。専用アプリが不要のWebブラウザ版のため、学校はもちろん家庭や校外での利用もできる。同時アクセス数は無制限で、多人数での協働学習でも利用しやすい。

今回の授業で利用した英語版のBritannica Schoolは、英語圏の学生向けに作られた百科事典で、ネイティブの専門家が執筆・編集を行っている。一部の英単語にはリンクが張られており、クリックするとその項目を解説したページをすぐに表示することができる。また、単語の発音を音声で確認できる機能もあるため、英語4技能の学習にも役立つ。

単語をダブルクリックすると英英辞典がポップアップで表示される

そのほか、日本語版の百科事典ブリタニカ・オンライン・ジャパンも用意されている。いずれの百科事典も定期的な更新で最新の情報を参照することができ、豊富な項目から、国際年鑑や統計情報まで、英語以外の探究学習やSTEAM教育などにも幅広く活用することができる。

ブリタニカ・オンライン・ジャパン

さらに、学習に役立つ画像・イラストのデータベース「Britannica IMAGEQUEST」も利用可能だ。350万点以上の著作権処理済みの画像や写真が収録されており、教材やレポート作成といった教育目的にのみ使用できる素材のため、安心して使うことができるのが特徴だ。

Britannica IMAGEQUEST

情報源の信頼性についてもっと学んでほしい

授業を行ったブルネリ教諭は、「今の時代は、英語そのものよりも『英語を使って何をするのか』が大事になってきています。英語力はもちろん必要ですが、英語をツールとして活用し、何ができるのかを生徒に理解してほしいと思っています」と話す。

同校の国際学級では、授業で単に英語を学ぶだけではなく、今回のように模擬国連をテーマにした授業のほか、起業家教育を英語で行うグループワークなどもカリキュラムに含まれている。

国際学級主任のブルネリ教諭。中学2年生と高校1年生の英語のほか、高校3年生の「アドバンスド・ライティング」も担当している

ブリタニカ・オンライン中高生版は学習ツールのひとつとして、今回のような調べ学習やグループでの協働学習、さらには部活動でも活用しているという。

「国際文化部という部活動では、文化祭で発表を行う際に、Britannica Schoolで情報を収集し、ポスターに使う画像データはBritannica IMAGEQUESTを利用しました」(ブルネリ教諭)

そして「ブリタニカ・オンラインはメディアリテラシーの面でも、信頼できる情報のみ掲載されているため、生徒が安心してさまざまな情報を調べることができます」と、ブルネリ教諭は利点を挙げた。高校1年生は、模擬国連をテーマとした一連の授業において、フェイクニュースについても学ぶ。「近年の生徒たちはスマートフォンを日常的に使う一方で、情報源の信頼性を確認しない傾向にあります。例えば、子どもが書いた個人的な主観のWebサイトを参考にしてしまうこともありました。そこで『まず情報源が信用できるものかどうかを確認する』『その上で、複数のサイトに同様の情報が掲載されているか』といった点を注意するように伝えています」と話した。

生徒主体の学びがどんどん進み、教員の負担軽減にもつながる

同校では現在、全学年の生徒が1人1台のiPadを所有している。「1人1台のiPad導入前は、事前に予約した上でコンピューター室に行っていましたが、現在は場所や時間を問わず、サッとiPadを取り出し気軽にブリタニカ・オンラインで調べることができるようになりました」という。

また、毎年高校2年生が行っている校内模擬国連の授業では、海外の模擬国連専門サイトを参照していたため、日本人の生徒には難しい部分もあった。そのため、教員がサポートしなければならない場面も多かったという。「Britannica Schoolは英語力に合わせてレベルを3段階に設定できるので、英語に苦手意識のある生徒でもチャレンジしやすく、生徒主体でどんどん学びを進められるようになりました」と、ブルネリ教諭は話す。

生徒主体の学びが自然に進む

なお、今回のようなテーマの授業は評価が難しいが、ブルネリ教諭はルーブリックで評価を行い、定期テストの時間には生徒に授業の反省点を英語で書かせている。生徒が自分自身を振り返ることで、より主体的に学ぶ姿勢が育まれていくという。

ブルネリ教諭は「これまでの校内模擬国連の決議案は多数決になりがちだったため、『協力し合い、解決策を話し合う』という形に変えていきたいです。また、国際学級では毎年高校1年生がボストン研修に行くので、事前の調べ学習に、ブリタニカ・オンラインを最大限に活用していきます」と、今後の目標を語った。

今回の国際学級の授業では、生徒たちが自分の調べたい項目を意欲的に調べ上げ、iPadを片手にクラスメイトと意見交換している姿が見られた。

iPadは授業に欠かせないものとなっている

「紙の百科事典には確かな情報が載っていますが、今の高校生はほとんど使いません。一方、インターネットでは手軽に最新の情報を取得できるものの、不確かな情報も多くあります。ブリタニカ・オンラインには、紙の百科事典とネットそれぞれのよさが含まれています」(ブルネリ教諭)

デジタルネイティブな高校生にとって、ブリタニカ・オンラインは安心して活用できる強力な武器になり得る。情報過多の時代だからこそ、自分の知りたいことについて確実な情報を得られるという体験は、生徒たちの主体的な学びを促す。1人1台の端末と組み合わせるデジタル教材として、ぜひ参考にしていただきたい。


ブリタニカ・オンライン中高生版は、中学校、高校など教育機関で利用されているオンラインのデジタル教材です。

ブリタニカ・オンライン・ジャパンは、中学校、高校、大学、図書館、企業など、国際社会で活躍する人のリサーチをサポートするオンライン百科事典データベースです。「ブリタニカ・オンライン中高生版」「ブリタニカ・アカデミック・ジャパン」よりお使いいただくことが出来ます。