
全国どの学校でも一定水準の教育を実施するための基準となるのが学習指導要領です。高校では2022年に改訂され、新学習指導要領へと変更されましたが、従来と比較してどのような変更点があるのでしょうか。この記事では、新学習指導要領はいつから使用開始されたのかについて触れたうえで、小学校から高校までの改定ポイントや、教育現場に与える影響を解説します。
そもそも学習指導要領とは、文部科学省が学校教育法等に基づいて、各学校における教育課程の編成基準を定めたものです。学習指導要領は、10年に1度のペースで更新されています。最新の学習指導要領を「新学習指導要領」と呼び、直近では以下のスケジュールで改定されました。
<新学習指導要領の改訂スケジュール>
・幼稚園…2020年度より全面実施
・小学校…2020年度より使用開始
・中学校…2021年度より使用開始
・高校…2022年度より使用開始
学習指導要領は、児童・生徒がどの地域で生まれたとしても、一定の水準で教育を受けるために重要な役割を果たしています。小学校・中学校・高校などを校種ごとに分類し、英語・国語・社会といった教科ごとの目標や、おおよその教育内容を一律で定めていることが特徴です。
学習指導要領は、国際情勢の変化や社会の要請に対応するために、目安として10年に1度のペースで改定されています。一例として1958年~60年改定では道徳の時間が、1998年~99年改定では総合的な学習の時間が新設されるなど、教育現場に大きな変化をもたらしてきました。
2020年度~22年度における新学習指導要領への改定も、グローバル化など社会的な変化に対応することを主な目的として行われています。今回の学習指導要領改訂の方向性としては「新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実」を掲げており、「社会に開かれた教育課程の実現」を目指しています。
文部科学省では、新学習要領が示す「資質・能力の3つの柱」として以下を挙げています。それぞれのポイントを確認しましょう。
<新学習指導要領が示す「資質・能力の3つの柱」>
・学びに向かう力・人間性
・知識・技能
・思考力・判断力・表現力
新学習要領が第一に示す柱は「学びに向かう力・人間性などの涵養」です。涵養(かんよう)とは「水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること」を意味しています。つまり、付け焼刃として教育するのではなく、指導が浸透するまで根気強く育成することが重要です。
具体的に目指すのは、主体的な学修や自己表現力、協働力、感性、そして思いやりの心です。また、多様な価値観を尊重することや、自分自身や他者、社会を理解する力の育成も目指します。これらの能力を養うために重要なのは、授業や課外活動だけでなく、グループワークや社会体験活動も経験することです。
知識や技能としては、基礎的な学問や技術、文化、歴史、地理といった分野の能力を習得することが目標とされています。また、社会のグローバル化に向けた知識を身につけることも重要です。情報の収集能力のみならず、信憑性を判断し真偽を見分ける能力、国際理解といった能力を養うことも求められます。
思考力・判断力・表現力の分野では、未知の状況にも対応できる能力全般の育成が必要です。問題解決能力や批判的思考力に加えて、想像力やコミュニケーション能力の育成も求められます。活発なディスカッションを取り入れることにより、これらの能力を育成しやすくなるでしょう。
最新の新学習指導要領のなかで、特に重要な改定ポイントとなったのは次の3つです。それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
<新学習指導要領における教科・科目の改訂ポイント>
・小学校での外国語教育の教科化
・高校での新科目「公共」の新設
・その他教科・科目での改訂ポイント
小学校における中学年では「外国語活動」が、高学年では「外国語科」が導入されました。文部科学省では、小学校の外国語教育の充実にあたり、新教材の整備や先生の養成、採用、研修の一体的な改善や専科指導の充実、外部人材の活用といった形で支援しています。
また、外国語教育においては、小学校・中学校・高校の一貫した学びを重視し、外国語能力の向上を図る目的を設定しています。さらに、国語教育との連携を図り、日本語の特徴や言語の豊かさに気付く指導の充実化を目指すことも、新学習指導要領における改定ポイントのひとつです。
高校における新学習指導要領では、従来の「現代社会」が新科目の「公共」に置き換えられました。公共は、既存する科目の倫理と併せて、人間としての生き方やあり方に関する中核的指導を行う教科です。道徳教育や政治参加、防災といった、安全な社会を実現するための教育も重視されます。
また、従来は現代社会または倫理・政治・経済が必修化科目でしたが、新科目の好況が必履修科目へと変更されました。なお、標準単位数は、従来の現代社会と同じ2です。
高校の新学習指導要領においては、次の教科・科目が改定されています。
・保健体育
科目と単位数、必修科目数は据置ですが、教育内容に改善事項が加えられました。新学習指導要領では、オリンピックやパラリンピックに代表される国際大会が、世界平和や共生社会の実現に寄与することなど、スポーツの意義や役割を学ぶ内容に改定されています。
・家庭
家庭科は家庭基礎、家庭総合、生活デザインの3科目でしたが、新学習指導要領では生活デザインが除外されています。一方で、和食や和装など日本の伝統的生活文化についての教育や、消費者保護の仕組みといった教育が追加されました。
・情報
従来の「社会と情報」「情報の科学」が「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」に置き換えられました。プログラミングや情報セキュリティなどの基礎を学ぶ情報Ⅰのみが必修科目です。
優れたICT教材は、新学習指導要領を取り入れた授業に大きな影響を与えます。以下のポイントを詳しく見てみましょう。
<ICT教材が新学習指導要領にもたらす影響>
・主体的な学びを促進できる
・情報収集と分析を深化させられる
・グローバル視点を育成できる
新学習指導要領では、児童・生徒が自ら考えて目標を設定する主体性を重視します。ICT教材を活用すると、児童・生徒が学習に対して興味や関心を持ちやすくなるでしょう。
例えばICT教材の百科事典を活用する場合、動画や写真、イラストなどを見ながら、おもむくままに知識を深められます。児童・生徒の知的好奇心を刺激するため、学習に対するモチベーションを向上させられます。
新学習指導要領で重視される「深い学び」にも、ICT教材が貢献する可能性が高いです。ICT教材を用いると、信頼性の高い研究結果や専門家の知見を収集できます。各種データはグラフなどにより分かりやすく可視化されており、論理的思考も強化できるため、深い学びを促進できるでしょう。
新学習指導要領では、英語教育の早期化を重視しています。ICT教材の英語教材を活用すると、リスニングや発音を含めた深い英語学習が可能です。児童・生徒の関心を引きやすい動画を用いた学習も進められるため、英語に対する苦手意識を排除するうえでも寄与するでしょう。
新学習指導要領とは、2020年~2022年に行われた学習指導要領の改訂です。「学びに向かう力・人間性」などの育成が重要とされており、高校では「公共」が新科目として登場するなどの変革が行われました。
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