
教育現場においては、評価を指導に活かすことが求められています。これを「指導と評価の一体化」といいますが、これが具体的に何を意味するのかわからない先生も多いでしょう。この記事では、指導と評価の一体化とはなにか、メリットや課題、形骸化しないためのポイントなどを解説します。
指導と学習の一体化とは、指導・評価を別々に扱うのではなく「指導状況を評価して次の学習に活かし、その成果を再評価する」といったサイクルを回すことを意味します。PDCAサイクルと同様の過程を経て、よりよい学習への改善を図ることが、指導と評価の一体化を目指す目的です。
指導と評価の一体化にあたっては、児童・生徒の学習の成果を的確に捉えて、授業の改善につなげることが期待されているのです。
指導と評価の一体化を意識することにより、児童・生徒、先生が得られるメリットは次の3つです。それぞれのポイントを解説します。
<指導と評価の一体化を意識するメリット>
・学習改善サイクルが早くなる
・教員自体の指導改善にもつながる
・「特定のタイミングでのみ結果を出せばいい」という考え方の改善につながる
学習改善サイクルを早められることが、指導と評価の一体化を意識するメリットです。
従来は学期末や学年末にテストを実施して、包括的に児童・生徒を評価することが一般的でした。しかし、指導と評価の一体化を意識して、授業中の発表や小テストへの評価と指導を繰り返すことにより、児童・生徒が直近の取り組みを振り返りやすくなります。そのため、学習サイクルを早めつつ、学習意欲を向上させる効果が期待できるのです。
児童・生徒に対する学習評価は、指導が子どもたちに役立っているかどうかを判断するポイントになるため、先生の指導改善につながることもメリットです。事前に立てた学習計画と結果を照らし合わせることにより「何が良かったか」「どこに問題があったか」を洗い出し、指導改善につなげられます。
先述したとおり、従来の評価方式は学期末や学年末に包括的な評価を行うものでした。そのため、日ごろの授業や小テストを重視せず「特定のタイミングで良い」と考える児童・生徒も多いです。
しかし、指導と評価の一体化を意識した授業を行うことにより、児童・生徒を評価するポイントをより細かく設定できます。そのため「期末テストだけ頑張る」といった考え方を改善させやすく、普段の授業や活動の質を高めやすくなるでしょう。
指導と評価の一体化に関する課題として挙げられるのは、具体的な指導計画や評価方法を決めるために用いる用語や方法が、地域や教科ごとに異なる点です。「知識・技能」をはじめとする3つの資質・能力について、1文で書くものもあれば、観点ごとに書くものもあり、統一されていません。
例えば算数・数学の場合、単元の目標や評価基準を3つの資質・能力に対応する形で書くことが一般的なため、単元の目標と評価基準の文章はほとんど同じです。この場合、2つの文章を分けて記載する必要性を見出しにくく、効率的な学修につながるとはいえません。
指導と評価の一体化を実現するための流れを解説します。
目標や評価基準については、最新の学習指導要領に基づき、それぞれの学校が決定します。各教科における「内容のまとまり」と「評価の観点」の関係性を確認したうえで、観点ごとのポイントを踏まえて、内容のまとまりごとの評価基準を作成しましょう。
まずは年間の指導・評価の計画を確認し、単元の目標を作成します。その後、単元の目標に合わせて評価基準を作成しましょう。最後に、ここまでの内容を踏まえて、評価場面や評価方法を決定します。何を基準に高く評価するのかだけではなく、改善が必要な場合の手立ても考案しましょう。
評価基準をもとにして、観点ごとに総括的評価を行います。ABCなどいくつかの段階に分けて評価し、良かったと課題がある点を確認しながら児童・生徒に対応し、指導内容の改善を図りましょう。
指導と評価の一体化は形骸化しがちです。形骸化を避けて、質の高い指導を行うために重要なポイントを確認しておきましょう。
<指導と評価の一体化を形骸化しないためのポイント>
・評価して終わりにならないよう改善を意識する
・生徒だけでなく保護者にも評価方針を共有する
指導と評価の一体化による効果を高めるために重要なのは、評価の結果を次の指導に活かすことです。評価の内容に応じた指導を意識することにより、指導の質をさらに高められます。評価した段階で完結させるのではなく、よりよい指導を提供できるよう、授業内容の改善を意識しましょう。
評価方針が曖昧な状態では、生徒だけでなく保護者にも不安を抱かせてしまいます。評価方針は児童・生徒や保護者と共有し、信頼を得るための努力を怠らないようにしましょう。
ICT教材は指導の一体化に向けて大いに役立ちます。その理由は次の3つです。
<ICT教材が指導の一体化に役立つ理由>
・リアルタイムに児童・生徒の理解度を確認できる
・先生同士で連携してデータを共有できる
・個別最適化した学習を支援しやすくなる
質の高いICT教材を活用して、指導の一体化を効率良く進めましょう。
ICT教材を活用すると、児童・生徒が課題をどこまで理解しているか、どこでつまずいているのかをリアルタイムに確認できます。従来の授業とは異なり、挙手や発言だけでは見えにくい児童・生徒の頭の中が手に取るようにわかるため、必要な指導をピンポイントに提供できるでしょう。
クラウド型のICT教材を利用する場合、先生同士で連携しながら、児童・生徒の学習データを共有できます。従来型の授業では、先生の経験やスキルによって学習レベルに偏りが生じがちですが、ICT教材を利用すると組織全体の底上げを図れるため、児童・生徒の能力を引き出しやすいでしょう。
児童・生徒は自らの学習履歴を確認できるため、自分の長所や弱点が可視化され、主体的かつ個別最適化した学習を行えます。自己評価を通じて学びを深めることは、指導と評価の一体化において重要な側面のひとつであり、自立した学習を支援しやすくなることもメリットです。
指導と評価の一体化とは、指導・評価を別々に行うのではなく、指導状況を評価して次の評価に活かすことを意味する言葉です。学習指導サイクルが早くなることや、先生の指導改善につながることなどが、指導と評価の一体化により得られるメリットといえます。
指導と評価の一体化を実現するためのツールとして有効なのがICT教材です。ブリタニカ・ジャパンでは、信頼できるデータベースにアクセスできるICT教材を取りそろえています。本場の英語に触れるデジタル教材や、エキスパート監修の日本語百科事典データベースなどを、指導と評価の一体化にお役立てください。
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