ChatGPTなどの登場により、生成AIの技術は飛躍的に向上し、多くの人々が生成AIと共存する時代に突入しました。教育現場でも生成AIが活用されていますが、利用するメリットやデメリットには何があるのでしょうか。この記事では、生成AIの適切な利用方法や活用事例も併せてご紹介します。
生成AIとは、学習したデータをもとにコンテンツを生成する人工知能です。「ChatGPT」や「Microsoft 365 Copilot」、「Gemini」などが生成AIと呼ばれています。生成AIでは、主に以下のことが可能です。
<生成AIでできること>
・文章の作成
・文章の翻訳
・画像や音声、動画の作成
・3Dモデルの作成
・プログラミングコードの作成
近年、生成AIは教育現場でも積極的に活用されています。6つの活用例を具体的に見てみましょう。
<教育現場における生成AIの活用例>
・情報収集をする
・プログラミングコードを記述・添削する
・英文を翻訳する
・教材や試験問題を作成する
・課題レポートの評価を行う
・各種資料を作成する
情報収集を効率化するうえでも生成AIが役立ちます。辞書や辞典と比較してスピーディに必要な情報を集められるほか、インターネット上の情報もまとめて表示されるため、学習に必要な情報を効率的に収集できるでしょう。
プログラミングコードの作成や添削には専門的な知識が不可欠でしたが、生成AIに丸投げすることも可能です。情報科の授業においては、アプリ作成時に生成AIを活用してコードを作成し、アプリを完成させた活用事例があります。
生成AIを利用すると、英文の翻訳や、日本語の英文化も可能です。英語の授業では、文法やスペルの確認ができることに加えて、音声入力の活用により、発音の正しさも確認できます。世界中の情報を学習に取り入れるハードルが下げることは、学習の質を向上させるために不可欠な要素のひとつです。
先生にとって便利なのは、教材や試験問題の作成を生成AIに任せられることです。学習範囲を指定して生成AIに出力させることにより、必要なタイミングで必要な内容の教材や試験問題を作成できます。
課題レポートの評価や小テストの採点といった業務において、生成AIのサポートを受けることにより、先生にかかる負担を軽減できます。これにより、授業の準備や児童・生徒への指導など、生成AIでは対応できない業務に集中することが可能です。
学校行事に関する案内文のたたき台や、海外の姉妹校に送るメッセージの作成にも生成AIを活用できます。また、アンケートの集計や分析で生成AIを利用することも可能です。
教育現場で生成AIを活用するメリットは、主に以下の5つです。それぞれを詳しく解説します。
<生成AIを教育現場で活用するメリット>
・効率よく学習できる
・ITリテラシーの向上につながる
・先生の負担が軽減される
・生徒個人にあわせた指導やフィードバックができる
・コスト削減につながる
生成AIを利用すると、情報収集や英語への翻訳、計算などの作業を瞬間的に行えるため、効率よく学習できることがメリットです。情報収集にかかる時間を削減することにより、濃度の濃い授業を行いやすくなります。
生成AIが提示する情報はすべて正しいとは限りません。生成AIによる情報が事実かどうかを判定する授業を導入することにより、真偽を見極める力がつき、ITリテラシーの向上につながるでしょう。
生成AIを活用すると、先生の負担を軽減できます。小テストや書類の作成、簡易的な採点といった業務では生成AIが力を発揮しやすく、たたき台として利用するデータの出力が可能です。先生の負担が減ると、児童・生徒と向き合う時間が増え、両者間の関係性も深まります。
生成AIは過去のデータをもとにして児童や生徒を分析し、評価します。生徒個人の課題や長所が瑕疵かされるため、個々にあわせた指導やフィードバックがしやすくなるでしょう。
生成AIを教育現場に持ち込むことにより、自動化できる業務が増えるため、人件費などのコストを削減できます。先述したように、先生の負担を軽減できることもメリットのため、コスト削減を実現しつつ教育の質を高められるでしょう。
教育現場で生成AIを活用するデメリットは次の5つです。メリットと併せて注意点も確認しましょう。
<生成AIを教育現場で活用するデメリット>
・正確性の担保が困難である
・教育の質が低下する可能性がある
・生徒の主体性や創造性への影響が懸念される
・個人情報や機密情報が流出する可能性がある
・倫理的・法的なリスクが存在する
生成AIが出力したデータは必ずしも正確とは限りません。誤った情報が紛れる可能性があり、正確性の担保が困難です。明確なエビデンスがあるかどうかを確認させるなどの対策が必要になります。
生成AIは教育の効率化において大いに役立ちますが、教育の質が低下する可能性がある点は副作用と考えなければなりません。生成AIを多用すると、考える力を養ったり、学ぶ意思を植え付けたりすることは難しくなるでしょう。
生成AIに頼りすぎると、児童・生徒の主体性や、アイデアの創出といった創造性を育みにくくなる可能性があります。
ただし、文部科学省は「教育現場で生成AIを活用して創造性が低下したかどうか」を調査しましたが、アンケート結果の回答は「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」への投票が大半でした。このデータから、生成AIの活用が学習に悪影響を及ぼすリスクは低いと考えられます。
個人情報や機密情報が第三者に流出するリスクにも警戒が必要です。生成AIは入力された情報を学習材料として活用するため、むやみに個人情報や機密情報を入力すると、第三者に情報が公開されるリスクがあります。
虚偽の情報を生成する「ハルシネーション」は生成AIに付き物であり、倫理的なリスクがあります。また、著作権や知的財産権を侵害したコンテンツが生成されるなど、法的なリスクが存在することにも注意しなければなりません。
生成AIには先述したようなデメリットやリスクもあります。生成AIを教育現場で適切に利用するために、以下のポイントを意識しましょう。
<生成AIを教育現場で適切に利用するためのポイント>
・使用上の注意点を早期に周知させる
・段階的に活用範囲を広げる
・生成AIに対応した評価方法を策定する
・教育委員会が主導して、制度設計や方向性の提示を行う
個人情報や機密情報の流出、ハルシネーションの発生など、使用上の注意点をあらかじめ周知させることが重要です。生成AI利用時の注意点を周知することにより、あらゆるリスクを軽減できます。
生成AIの活用範囲は段階的に広げましょう。生成AIはテスト結果などのデータを学習して情報を出力します。蓄積されたデータが少ないと、精度の高い分析ができず、性能を発揮できません。
児童や生徒による制作物が、生成AIのみで作られたのか、児童や生徒主体で作られたのかを判断することは困難です。そのため「生成AIが未学習のテーマを試験に混ぜる」「対面による会話も評価対象に加える」など、生成AIに対応した評価方法を策定しましょう。
生成AIの活用範囲などについて、教育委員会の主導で制度設計や方向性を定めることもポイントです。文部科学省によるガイドラインや、先進自治体による生成AIの使い方を参考にしながら、生成AIの利用を監督すると良いでしょう。
ChatGPTをはじめとする生成AIとは、文章やプログラミングコードの作成、翻訳などが可能なツールです。教育現場で生成AIを活用することにより、学習の効率化や先生の負担軽減、ITリテラシーの向上といった効果を得られる可能性があります。
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