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PBLのメリットとは?課題の解消に向けてICT教材の活用が有効な理由とは

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近年の教育現場ではPBLが話題となり、高校や大学においても多数の実践事例を確認できます。しかし、PBLという言葉は独り歩きする傾向があり、どのようなメリットがあるのか分からない方も多いでしょう。この記事では、PBLを現場に導入するメリットや実践方法、事例、そして課題と解決策をご紹介します。

PBL(問題解決型学習)とは?

PBL(Project Based Learning、問題解決型学習)とは、生徒自らが問題を見つけて、自ら問題を解決する能力を育成する学習方法です。まずはPBLの概要をご紹介します。

<PBL(問題解決型学習)とは>

・PBLの特徴

・SBL(科目進行型学習)との違い

・なぜPBLが注目されているのか?

PBLの特徴

文部科学省はアクティブラーニングを推奨していますが、PBLはアクティブラーニングの一種です。PBLはアメリカの教育学者であるジョン・デューイ氏が提唱した学習方法であり、答えが複数ある課題に対して生徒自ら仮説を立て、調査・検証することが特徴といえます。

SBL(科目進行型学習)との違い

SBL(Subject-Based Learning、科目進行型学習)とは、先生が教科書の内容に沿って授業を進める学習スタイルです。PBLとは学習の順序が異なります。PBLの場合、与えられた課題を解決するためのアプローチを試みますが、SBLは一般的な知識を学んでから課題に挑むことが特徴です。

なぜPBLが注目されているのか?

少子高齢化やグローバル化の影響により、主体的・協同的に課題を解決する能力を養うアクティブラーニングが文部科学省により推奨されています。そのための教育方法として適していると考えられるのがPBLであり、これがPBLが注目される大きな理由です。

例えば「海洋汚染の撲滅」をテーマにする場合、解決策としては「プラスチックごみの削減」や「分別の徹底」、「清掃活動」などを挙げられます。これらの解決策を実現するための方法を、児童・生徒が主体的に考えながら活動することにより、アクティブラーニングを推進しやすくなるでしょう。

PBLのメリット

PBLの主なメリットは次の6つです。それぞれのポイントを解説します。

<PBLのメリット>

・論理的思考力が向上する

・知識が定着しやすくなる

・応用力が強化される

・表現力・コミュニケーション能力が向上する

・情報リテラシーが身につく

・主体性が育まれる

論理的思考力が向上する

生徒は決まった答えのない課題と向き合うため、論理的思考力が向上することがPBLのメリットです。PBLでは、解決策を見つける過程において、生徒が自分自身の思考を整理します。課題を多角的な視点から捉えられるため、学習のみならず、日常的なコミュニケーションで役立つ能力も養えるでしょう。

知識が定着しやすくなる

PBLは生徒が主体的に知識を見つけ出して理解する学習法のため、知識が定着しやすいこともメリットです。従来の受動的な学習スタイルでは、生徒が一方的に情報を受け取る立場に置かれるため、知識の定着が一時的になる可能性があります。

応用力が強化される

自分が得た知識をどのように応用して解決するかを考えながら学習するPBLは、応用力の強化にも役立つ可能性が高いです。情報を丸暗記する従来型の学習スタイルとは異なるため、生徒が難題に直面したとしても、自分自身の知識を活かして解決しやすいでしょう。

表現力・コミュニケーション能力が向上する

PBLでは、グループワークやディスカッションを繰り返しながら課題の解決を目指したり、自分の解決策を他者に伝えたりします。そのため、表現力やコミュニケーション能力の向上にも役立つ可能性があります。

情報リテラシーが身につく

PBLでは、生徒自身が自ら情報を収集しながら課題解決に向けて分析を行うため、情報リテラシーが身につくこともメリットです。いわゆる闇バイト問題やSNSの使い方など、現代社会ならではのトラブルを避けるためにも、情報リテラシーを身につけることは不可欠といえます。

主体性が育まれる

PBLは主体性を育むために効果的と考えられるアクティブラーニングの一種です。自ら課題を見つけて解決する過程において、主体性が育まれる可能性が高いでしょう。

PBLの2つのアプローチ方法

PBLのアプローチ方法は次の2つです。それぞれの特徴をご紹介します。

<PBLのアプローチ方法>

・チュートリアル型

・実践体験型

チュートリアル型

チュートリアル型は、生徒たちを小さなグループに分けて、グループワークやディスカッションを通じて課題への解決策を模索する方法です。基本的には教室内のやり取りのみで学習を進めます。

【チュートリアル型のメリット・デメリット】

メリット

デメリット

・授業内で完結しやすい

・少ない準備で学習できる

・学べる内容が限定的になる

・現場で役立つ応用力を養いにくい

実践体験型

実践体験型は、実社会のなかから課題を抽出し、自治体や民間企業と連携して学習を進める方法です。メリット・デメリットを表にまとめました。

【実践体験型のメリット・デメリット】

メリット

デメリット

・実社会の事例に触れられる

・実用的なスキルや応用力を身につけやすい

・外部組織との連携が必須となる

・準備に時間と手間がかかりやすい

PBLの進め方

PBLの進め方を5つのステップで解説します。

 

① 課題の設定
日常生活や社会から問題を発見し、問題を解消させるための課題を設定します。

② 情報収集
課題解決に必要な情報を収集します。書籍やインターネットの情報のみならず、生徒自身の感想も大切な情報の一つです。

③ 情報整理・分析
収集した情報の整理や比較を行い、情報を分析します。数値に関する情報はグラフ化すると分かりやすいでしょう。

④ 解決策の実践・検証
分析結果をもとに導き出した解決策を実践し、検証します。どこで誰が何をするのかといった具体的な計画を立てましょう。

⑤ 成果発表・振り返り
実践と検証により得られた成果をまとめて発表し、振り返ります。新たな課題を発見することにより、今後の学習につなげやすくなるでしょう。

高校におけるPBLの実践事例

高校におけるPBLの実践事例を2例ご紹介します。

<高校におけるPBLの実践事例>

・英語を用いたコミュニケーションを促進するための実践事例

・文章に描かれる人物の心情を表現に即するための実践事例

英語を用いたコミュニケーションを促進するための実践事例

千葉県にある高校における英語の授業では、積極的に英語でコミュニケーションを取る態度を育成するためにPBLを実践しています。授業の工夫と効果は次のとおりです。

<授業の工夫と結果>

・生徒が興味や関心を持ちやすい話題や人物を登場させた

→自分なりの表現を工夫する結果を得られた

・間違えることを前提に「どうしたら相手に伝えられるか」を意識するように伝えた

→別の表現に言い換えたり、身振り手振りを交えたりといった試行錯誤が生まれた

・PBLを踏まえたうえでコミュニケーションとは何か再度問いかけた

→コミュニケーションの大切さや価値の高さを実感する生徒が見られた

文章に描かれる人物の心情を表現に即するための実践事例

徳島県にある高校における国語の授業では、文章に描かれた人物や情景、心情などを表現に即して読み味わう能力を養うためにPBLを実践しています。

<授業の工夫と結果>

・グループでまとめた疑問点に色付けするなどして可視化した

→物語に描かれている出来事への関心を深められた

・古典の学習において、先生が今と昔の習慣の違いを補足した

→登場人物の行動や体験に疑問を持ち、根拠について議論しながら解決の見通しを立てられた

・発表時には考察の根拠を明かすように伝えた

→必要な知識を全体で共有し、作品の読みを深め、学ぶ楽しみを実感させられた

PBLを導入する際の課題と解決策

PBLの導入時に生まれる主な課題は次の4つです。解決策と併せてご紹介します。

<PBLを導入する際の課題と解決策>

・指導者の確保が必要となる

・生徒の評価が難しい

・学習効果の予測が難しい

・時間とコストがかかる

指導者の確保が必要となる

PBLには適切な指導ができる人材が不可欠です。特にチュートリアル型の場合、生徒に助言を与えられるチューターとしての役割を果たす先生が必要になります。PBLを正しく理解するための教材を取り入れるといった対策をすると良いでしょう。

生徒の評価が難しい

PBLでは正解のない課題に挑むことが多いため、生徒の評価が困難です。画一的に点数を付けられないため、先生がPBLについて理解して、評価の基準を明確にする必要があります。

学習効果の予測が難しい

設定する課題や生徒の取り組み方によって、学習効果にばらつきが生じやすいこともPBLの課題です。生徒が興味や関心を持ちやすい問題を選ぶなどの工夫を行い、学習意欲を高めることが求められます。

時間とコストがかかる

グループを組んだり、ディスカッションをしたりといった作業を伴うため、時間がかかりやすいこともPBLの問題点として挙げられます。低コストかつ学習を効率化しやすい教材を導入するなどの対策が有効です。

PBLの深化にはICT教材の活用が効果的

PBLを深化させるためには、ICT教材を活用すると効果的です。その理由について、3つのポイントから解説します。

<PBLの深化にICT教材の活用が効果的な理由>

・情報収集を効率化できる

・コミュニケーションを活性化しやすい

・成果物の質が向上する

情報収集を効率化できる

PBLでは児童・生徒自身が情報収集を行いますが、ICT教材の活用により、情報収集の効率化が可能です。あらゆる情報にアクセスできることに加えて、従来のように図書館などで参考書を探す必要もありません。これにより、児童・生徒は幅広い視点を学習に取り入れやすくなります。

コミュニケーションを活性化しやすい

対面に特化したグループワークでは、意見が衝突したり、意見を発信できる児童・生徒とそうでない児童・生徒に分かれたりしがちです。ICTを活用すると、チャット機能などを活用してコミュニケーションを活性化させられるほか、児童・生徒ごとの進捗も把握しやすくなり、誰も取り残さない教育が可能になります。

成果物の質が向上する

プレゼンやレポートで発表する成果物の質が向上することもICT教材を活用するメリットです。信頼性が高く、虚偽情報が含まれないデータベースを用いたICT教材を活用すると、情報モラルやリテラシーの早期教育も実現できます。分かりやすい画像や動画を使った調べ学習ができれば、児童・生徒の理解が深まりやすく、これも成果物の質の向上に寄与するでしょう。

まとめ

PBLとは問題解決型学習のことで、アクティブラーニングの推進と共に注目度が高まりました。論理的思考力や表現力の向上、応用力の強化などを目指せる点がPBLのメリットです。

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