【探究・知識を深める】キング牧師没後50年”How Long, Not Long”の演説の背景

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キング牧師没後50年”How Long, Not Long”の演説の背景

人種差別撤廃を目指した非暴力闘争の指導者で、ノーベル平和賞受賞者のキング牧師(Martin Luther King, Jr.)が暗殺されてから50年が経ちました。キング牧師と言えば、1963年のワシントン大行進(March on Washington)の際に行った “I Have a Dream” の演説が有名ですよね。これは1964年の公民権法Civil Right Act)の成立に大きな影響を与えました。では、”How Long, Not Long” の演説はご存知でしょうか?以下に演説の一節をご紹介します。

I know you are asking today, “How long will it take?…How long will prejudice blind the visions of men, darken their understanding, and drive bright-eyed wisdom from her sacred throne?”
…How long? Not long, because no lie can live forever.
How long? Not long, because the arc of the moral universe is long, but it bends toward justice.

この演説が行なわれたのは、1965年3月25日、アラバマ州モントゴメリーの州議事堂前でのことでした。この日、議事堂前には、キング牧師とともに、アラバマ州の都市セルマから5日間をかけて行進してきた多くの人々が集まっていました。では、この行進はなぜ行なわれたのでしょうか?

その背景には、1964年の公民権法およびアメリカ合衆国憲法修正第15条(Fifteenth Amendment)で、アフリカ系アメリカ人の投票権が保障されたにもかかわらず、事実上剥奪されていたことがあります。公民権法制定後も現実的には差別が続いており、特に南部の州では、有権者登録が意図的に妨害されるなどしていました。この状況に抗議するために行進が行なわれ、アメリカ政府は投票権を保護するための、より実効的な法律の必要性にせまられたのです。

「いつまでかかるのか?そう長くはない…」キング牧師がそう演説してから約5ヵ月後、公民権運動American civil rights movement)における重要な法律の一つである投票権法(The Voting Rights Act)が成立しました。これは、有権者登録時の識字試験などを禁止し、一部の州においては、その管理を連邦政府に移管するものでした。この法律の効果は劇的で、1965 年末までに、南部の5州だけで新たに16万人のアフリカ系アメリカ人が登録したといわれています。

実は、この行進は順調に行なわれたわけではありません。
そこにいたるまでの詳しい過程や、そのきっかけとなった「血の日曜日事件」などについては、ブリタニカ・オンライン・ジャパンの「セルマ大行進Selma March)」をぜひご覧ください。


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