• ホーム
  • ブログ
  • コラム
  • 【調べ学習 ・協働学習】いまこそ考えたい!  日本のこれからの米づくり―教材制作秘話

【調べ学習 ・協働学習】いまこそ考えたい!  日本のこれからの米づくり―教材制作秘話

  • ブリタニカ・ジャパン

 

2022年2月に始まったロシアウクライナ侵攻の影響は、私たちの身の回りにも及んでいます。コムギや原油の価格が高騰し、日本でもこのところ、食料品や日用品の値上げが相次いでいます。コムギ価格の高騰をきっかけに、コムギのかわりにを利用できないか、企業などが模索を始めたというニュースを耳にするようになりました。

米は、食料自給率の低い日本が自国でまかなえる唯一の食料です。1950年ごろまでの日本では多くの人が農業を営んでいましたが、近年は米の消費量の低下とともに生産量も減り、農業人口の減少が続いています。特に、後継者不足の問題は深刻です。

米の生産量と消費量

さまざまな課題を抱える「米づくり」ですが、国民の主食を確保するうえで大変重要な産業であるため、小学校5年生の社会科では必ずこのテーマを扱います。子供たちは、農業従事者がどのようにして生産性の向上や品質を高めるための工夫をしているかや、米づくりの課題について学びます。

ブリタニカ・スクールエディション」では、この社会科の単元に関連し、「これからの米づくりはどうするべきか?」というオープンエンドのテーマで、協働学習をおこなうための素材を豊富に掲載しています。子供たちがこのテーマを自分のこととしてとらえられるような、また思考の拠り所になるようなコンテンツをそろえていますが、その中の1つに、山形県鶴岡市で株式会社庄内こめ工房を経営して農業を営む、齋藤一志さんのインタビュー動画と記事があります。(→米づくり農家にインタビュー[米づくりへのこだわり]

私は教材制作のために当事者に直接お話を伺い、これまでの農業に対するステレオタイプなイメージがガラリと変わりました。教科書だけでは学べなかった、農業の現場で取り組まれているさまざまな変革を肌で感じる印象的な取材でしたので、ご紹介したいと思います。

取材に伺ったのは2018年の3月。コロナが猛威を振るう前でした。田んぼにはまだ雪が残っていました。大量の米袋を高く積み上げた大きな寒い倉庫の中で、齋藤さんは撮影に応じてくれました。

齋藤さんは、庄内地方を中心とした専業農家や若手の農業後継者を束ね、定期的に研修会を開いて米づくりに関する情報交換をしています。「米づくりで一番大切なことはなんですか?」と尋ねると、「おいしいお米をつくること。どんなに安全でも、どんなに安くても、おいしくなければ買ってもらえないからね」と言い切っていらっしゃったのが、強く記憶に残っています。

おいしさを追求しているため、それぞれの農家の米が混ざって区別がつかなくなってしまうカントリーエレベータは使用していないとのことでした。各農家で個別に米の品質を管理し、切磋琢磨することで、よりおいしい米づくりを目指しているそうです。教科書には必ず出てくるカントリーエレベータですが、あえて使っていないというのは非常に新鮮でした。

齋藤さんが、おいしさの次に大切にしているのが生産性です。農薬の散布にはドローンも活用しています。重いタンクを背中に担ぎ、歩き回って農薬をまくのは、昔の話だと笑っていらっしゃいました。除草剤も現在は水に溶ける紙パック式のものを使用していて、田んぼの畔から投げ入れるだけでよいそうです。

いちばん驚いたのは田植えをしないということ。教科書に掲載されている米づくりでは、を育ててから水田に植えるのが一般的ですが、齋藤さんのところでは苗はほとんど植えず、ラジコンヘリコプターを使って田んぼに直接種もみをまくそうです。昔はこの方法では苗まで育たなかったそうですが、最近は品種改良が進み、直まきでイネを育てることが可能になったそうです。そのため、最も大変な春の農作業がずいぶん楽になったとおっしゃっていました。

最後に、米づくりの未来を担う子供たちにメッセージをお願いしたところ、齋藤さんは、「農業はきつくて同じことの繰り返しでつまらない、というのは大間違い。知恵を絞っていろいろなやり方が試せる農業ほど自由な仕事はないんですよ」とおっしゃいました。さらには、「農業人口が減少している一方で農地は余っているから、まさにこれからが大規模農業に取り組める大きなチャンスなんです」と熱く語ってくださいました。
この取材は2018年におこなったものですが、世界情勢の変化をきっかけに米の価値が見直されているいまこそ、あらためて、齋藤さんの言葉を子供たちに伝えたいと感じています。

ブリタニカ・スクールエディション」には、百科事典項目やグラフ・写真のほかに、こうした独自取材に基づく動画や記事も収録しています。これからも、書籍やインターネットだけでは手の届きにくい有益な情報を掲載し、子供たちに高度な思考を促すためのコンテンツを制作していきたいと思います。


上記のリンク先をご覧になるには、ブリタニカ・スクールエディションへのアクセス権が必要です。

ブリタニカ・スクールエディションは、小学校、中学校など教育機関で利用されているオンラインのデジタル教材です。