
2020年4月から全国の小学校・中学校・高校にキャリアパスポートが導入・実施されました。それでは、キャリアパスポートは何を目的に導入されたのでしょうか。この記事では、キャリアパスポートに関する概要を解説したうえで、作成時のポイントや書き方の具体例、活用例をお伝えします。
キャリアパスポートとは、児童・生徒が小学校・中学校・高校での学びと活動の様子を記録して、将来のキャリア形成に活かすためのものです。小学校から高校までの12年間を1冊にまとめることが特徴で、日本全国どの地域の学校に通っていても、児童・生徒が自身の足跡をキャリアパスポートに蓄積できます。
キャリアパスポートは、学年や学校の垣根を越えて、子どもの成長をつなぐことを目指して導入されました。キャリアパスポートの内容は、主に以下の3つです。
<キャリアパスポートの内容>
・教科学習に関連するもの
・学校行事やクラブ活動、友達との関わりなど、学校内での活動に関連するもの
・ボランティアなどの地域活動や家庭内での取り組みなど、学校外の活動に関連するもの
「将来の夢や目標」と「現在学校で学んでいること」をリンクさせる内容のキャリアパスポートを作成することにより、子どもが主体的に学ぶ意欲を促し、キャリア形成を下支えする目的で用いています。
かつてのキャリア教育は「就業体験」「進路指導」が主であり、学校教育の一部としてみなされる傾向がありました。しかし、キャリア教育において真に必要なことは、子どもの自立に向けて必要な能力や態度を育成することです。このような理想と現状のギャップを埋めるためのツールとして、キャリアパスポートが導入されています。
キャリアパスポートに書き込む内容は幅広いため、作成時に何を意識すると良いか曖昧になりがちです。キャリアパスポートを作成するときは、以下のポイントを意識しましょう。
<キャリアパスポートを作成するときのポイント>
・長期的に活用できる記録にする
・学校生活だけでなく、家庭や地域における学びも含める
・保護者や教員が関わり、フィードバックを行う
・学年や学校が変わるときには必ず引き継ぎを行う
キャリアパスポートは小学校から高校までの12年間にわたって記録するものです。そのため、長期的に活用できる記録にすることを意識しましょう。キャリアパスポートは、卒業後のキャリア形成にも利用できるように設計されているため、将来的な就職や転職の参考になるように記入することがポイントになります。
キャリアパスポートに書き込む内容は、学校内だけでなく、学校外の活動や学びも含めましょう。学校外の活動は、人間関係の構築やコミュニケーション能力の向上、社会生活に必要なスキルの習得などに役立ちます。学校における試験結果などにとらわれすぎず、幅広い視野で評価することが重要です。
児童・生徒がキャリアパスポートに記入した内容を確認し、保護者や担任以外の先生の協力も受けながらフィードバックを行いましょう。主観的な評価に依存せず、第三者による客観的な評価も取り入れることにより、キャリア形成に活かしやすいキャリアパスポートを作成できます。
文部科学省は、キャリアパスポートについて「学年や学校種を超えて引き継ぐものにする必要がる」と位置付けています。引っ越しなどにより住む地域が変わったとしても、高校卒業まではキャリアパスポートに記入し続ける必要があるため、学年や学校が変わる場合は必ず引き継ぎを行いましょう。
キャリアパスポートの書き方について、小学校・中学校・高校に分けて具体例をご紹介します。作成の流れや、入れると良い要素を確認しておきましょう。
<キャリアパスポートの書き方と具体例>
・小学校でのキャリアパスポートの書き方
・中学校でのキャリアパスポートの書き方
・高校でのキャリアパスポートの書き方
小学校でキャリアパスポートを書くときに重要なのは、児童の発達段階に合わせてアプローチすることです。文字の大きさを工夫したり、漢字と仮名を使い分けたりすると、児童がスムーズに記入しやすくなるでしょう。また、キャリアパスポートの目的について、事前に分かりやすく説明することも重要なポイントです。
<小学生向けの質問例>
・友達と仲良くできましたか?
→人間関係の構築について振り返るための質問です。
・新しくチャレンジしたことはありますか?
→挑戦する意欲や勇気を問う質問です。
・夢や目標に向かって工夫したことは何ですか?
→将来の夢や目標を実現するために、どんな努力をしたか振り返るための質問です。
中学生に向けたキャリアパスポートの書き方で重要なのは、新たなステージと自己認識の発展に対応することです。中学校からは自己PR欄が新設されるため、生徒に自己分析を促進できます。小学校での学びを振り返ることに加えて、自己分析を活かしながら、具体的な今後の目標を立てるよう促しましょう。
<中学生向けの質問例>
・進んで役割を見つけたり、分担したりしながら、周囲の人と協力して行動しましたか?
→協調性に関する振り返りを促し、協働や自分の役割を見つけることの重要性を伝える目的で行う質問です。
・問題が発生したとき、何を改善すれば同じ問題を繰り返さないで済むか考えましたか?
→どのように問題を解消したか振り返り、問題解決能力を養うための質問です。
・自分の将来について目標を立て、実現に向けた方法を考えましたか?
→目標達成に向けて行った努力を記録し、キャリアプランニング能力を育むことを目的に行う質問です。
高校生に向けたキャリアパスポートでは、自身の長所や成長したい部分について、生徒自身に分析を促して記入させることが重要です。高校生活だけではなく、小学校や中学校の生活も振り返りながら、自分だけの言葉で書き込むように促しましょう。
<高校生向けの質問例>
・今学期、学習面で取り組んだことや、良かったことは何ですか?
→学習における具体的な成果と改善点を振り返ることにより、今学期にどんな努力をしたのかを考えさせるための質問です。
・来学期に取り組みたいことは何ですか?
→近い将来の学習計画を立て、学習意欲を高めるための質問です。
・来年どのような自分になりたいですか?そのために今すべきことは何ですか?
→自分自身の将来像をイメージし、なりたい自分になるために何をすべきか考えさせる質問です。
キャリアパスポートの活用事例は、次の2つに分けられます。それぞれ詳しく見てみましょう。
<キャリアパスポートの活用事例>
・授業や課外活動での活用
・三者面談やカウンセリングでの活用
授業においては、1年間の成長を振り返る目的でキャリアパスポートを活用できます。別の生徒とペアを組み、互いの成長を確認し合うと効果的です。成長を可視化することにより自覚を促し、新しい目標を生み出しやすくなります。また、職場体験など課外活動においても、キャリアパスポートを活用することにより、伸ばせたことや新しく発見できたことを判断しやすくなります。
三者面談やカウンセリングでキャリアパスポートを活用すると、児童・生徒の良さや可能性を確認しやすくなります。学校で取り組んでいることや、成長できたことの記録を振り返られるため、保護者の安心を引き出しやすいこともメリットです。
キャリアパスポートにはICT教材との関連性もあります。具体的なポイントを3例見てみましょう。
<キャリアパスポートとICT教材の関連性>
・多様なスキルを記録できる
・グローバルな視点を付け加えられる
・取得したスキルを将来設計に活かしやすい
ICT教材によって取得したスキルを記録することにより、キャリアパスポートに具体的な証拠として残せます。例えば画像や動画を使ったプレゼンに慣れておけば、プレゼンスキルや想像力を証明でき、キャリアパスポートにデザインスキルとして記録できるでしょう。
児童・生徒が自身を持てるスキルを育むことにより、児童・生徒が自信を持ってキャリアパスポートを作成しやすくもなります。
ICT教材は英語力の向上にも役立ちます。ICT教材を活用することにより、日ごろから英文を見る機会を設けると、英語への苦手意識が薄れるでしょう。
英語で記された教材や論文に触れたり、海外の児童・生徒とオンラインを通じて交流を持ったりすることにより、キャリアパスポートにグローバルな視点を付け加えられます。
ICT教材から得た知識やスキルをキャリアパスポートに整然と記すことにより、小学校・中学校・高校それぞれのカテゴリーに情報を引き継ぎやすくなります。主体的な振り返りと自己評価も容易になり、児童・生徒自身が「自分に得意なこと」を見つけやすくなるため、将来設計にも活かしやすいです。
キャリアパスポートとは、小学校から高校までの12年間の活動を記録して、キャリア形成に活かすためのものです。長期的に活用できる記録にすることや、学校生活以外の学びも記録に含めることなどが、キャリアパスポートを作成するときのポイントになります。
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