Britannica face to face

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Britannica face to face Vol.1


たとえば目の前に最高級のウナギがあっても、ウナギを食べたいときとそうでないときってあるでしょう。教養も、たとえば数学について考えたいと思ったそのときに、数学に関する本を読まないとだめなのです。私も最初に筒井康隆の『虚構船団』を読んだとき、あまり気分が乗らなくてよくわからなかったのですが、その後読み返してみたら、がぜん内容が読み取れておもしろかったという経験があります。


── 木村教授は、学生時代をどのように過ごされていましたか。


高校時代は部活には入ってなくて、生徒会の役員でした。生徒会の仕事がないときはいつも図書館に行っていましたね。町でいちばん大きな図書館で、宿題と学校の勉強をやって、それ以外は好きな本を読むという日常でした。専門性の高い蔵書もそろった図書館でしたから、いろいろ読みました。数学はあまり得意ではなかったですけど、理科系科目は得意でした。化学も生物も大好きで成績も抜群でしたよ(笑)。建築にも興味がありました。いいですよね。あの空間の驚きというか、好きですね。


── そういえば、憲法学者と社会学者と建築家による『いま、〈日本〉を考えるということ』(河出書房新社)はたいへんおもしろかったです。建築家の山本理顕さんの視点は斬新ですし、社会学者の大澤真幸さんは難解なことをかみ砕いて説明してくれてたいへんわかりやすくって。


あれは、この10年ぐらい構想を練っていた本ですから(笑)。


── 高校時代を経て進学し、法学を志すことになったきっかけはなんですか?


まず就職までを見すえたときに、裁判官や弁護士になるにしても一般企業に勤めるにしても、法学はよいのではないかと考え、法学部を目指しました。でも司法試験の勉強をするうちに、いやになっちゃったんですね。学者の方が向いているだろうと感じ始めました。


当時の東大法学部は学者になるためのコースが充実していました。法学部を卒業してすぐ給料のもらえる助手になる、学士助手という制度があったんです。3年の任期で助手論文を提出すると、いきなり大学教員として就職できるというコースがあったんですよ。だから私は修士号も博士号ももっていないんです。


普通だったら、法学部を卒業して法学士になった後、大学院に行って修士・博士となれば最低5年かかります。東大法学部で優秀な人は大学院に進んで研究職を目指すのではなく、収入などの待遇面もずっとよい、弁護士や検事、裁判官のような実務家を目指す人が多くなってしまいます。現在は司法試験制度が変わったので、状況は異なりますが、当時は学部3年生のうちに司法試験に受かってしまう人もいたので、学士助手はそういう優秀な人間を研究の道につなぎとめるという趣旨もあったんですね。


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