「日本」と「トンボ」の切っても切れない関係

 

トンボの島

 日本は「トンボの島」だということを知っていますか?その昔、日本は秋津洲(あきつしま・あきづしま)と呼ばれていました。日本書紀によると、初代天皇とされる神武天皇が、大和(本州)を平定し、小高い丘から日本の国土を眺めた際、その形を称して「大きくはないが、何と素晴らしい国を得たことだろうか。あきつの臀占(となめ)のような形をしている」と述べたそうです。それにより日本の国号が「秋津洲」となったとされています。この発言に出てくる「あきつ」がトンボです。トンボは古来より秋津、秋津虫と呼ばれて親しまれてきました。臀占は交尾のことを指しますので……神武天皇が日本をどう形容したかはもうおわかりですよね。

 昆虫に詳しい方はご存じかと思いますが、トンボは春から秋まで普通に見られ、成虫のまま越冬する種類もいます。ではなぜ秋津虫(秋の虫)なのでしょうか。それは、日本の風土、文化と大いに関係があります。古代の日本人にとって最も大切な季節であった秋、収穫期の水田の上をアキアカネやウスバキトンボに代表される「赤トンボ」が群れになって舞い、その姿がはるか昔より毎年繰り返され、いつしか五穀豊穣の象徴となりました。実際、古事記、日本書紀ではそれぞれ本州のことを、「大倭豊秋津島」「大日本豊秋津洲」(おおやまととよあきつしま:読み方はどちらも同じ)と表しており、実り豊かなイメージをここからもうかがい知ることができます。

戦国時代にもブレイク

 西洋においては、不吉なものととらえられることもあるトンボですが(英名はdragonfly。ドラゴンは不吉なものとされている)、日本では、後退せず、前進あるのみ、そして素早く飛び回って害虫を捕食する姿から、「不退転」の精神を表す縁起物として、特に武将に好まれました。兜や鎧、刀の鍔(つば)、印籠など様々なものの装飾に用いられています。例えば前田利家の兜には、トンボがあしらわれていました。相当にハマっていたのが武田信玄の家臣、板垣信方で、兜や手甲、着物など至る所にトンボの装飾を施したといわれています。
 トンボが「勝虫」「勝ち虫」とも呼ばれていることは知っていた、という方は結構いらっしゃるかもしれませんね。

トンボは実際スゴイ!

 その勇猛果敢なハンターとしての側面や自由自在に飛翔する姿が戦国武将に好まれたことからもわかるように、実際にトンボは昆虫の中でも屈指の飛行能力を持っており、4枚の羽根を使ってアクロバティックな飛行を見せてくれます。急加速、急停止はもちろん、宙返りやホバリング(空中で停止した状態をつくること)もでき、飛びながら獲物を捕獲することも可能です。トンボは、乱流を抑えるのではなく、あえて乱流を引き起こし、それを利用して飛行しています。トンボの特別な飛行能力はドローンの設計にも取り入れられており、自然界、生物の仕組みから学んだことを技術開発に生かすバイオミミクリの好例といえます。

経産省STEAMライブラリー 未来の教室「トンボの紫外線反射特性【日本語版】」より

 また、トンボには紫外線可視光線の両方を反射する物質を体の表面から分泌する種類がいます。この物質を人為的に合成したところ、紫外線を反射する性能と撥水性をもつ構造が形成されることがわかりました。この物質は、日焼け止めや保護コーティングなどに応用できる可能性があると考えられています。

 トンボは優れたモデル生物であり、これら以外にも多くの特長をもっているため、様々な分野の科学者がトンボから自然の仕組みを学び、私たちの生活へ科学的に応用しようとしています。無限の可能性を秘めるトンボに関心を持たれた方はぜひ、ブリタニカの「STEAMライブラリー」をご覧ください。

 ブリタニカ・ジャパンでは「トンボの紫外線反射特性」というSTEAM教育のコンテンツを、経済産業省の「STEAMライブラリー」にて提供しています。このテーマでは、トンボの特長や私たちとの関係を理解することから始まり、その後トンボや他の動植物が持つ紫外線反射特性の基礎とその必要性を学びます。また、紫外線反射特性の化学的根拠を表現するアート作品を制作し、互いにフィードバックを行います

1コマ目: トンボについて知るトンボから何を学ぶことができるか。
2コマ目: トンボの紫外線反射特性動植物が紫外線を反射したり利用したりすることには、どのようなメリットがあるだろうか。
3コマ目: 紫外線反射特性をアーティスティックに表現するサイエンスとアートの類似点は何だろう。
4コマ目: アート作品を制作するスライドの絵はサイエンスだろうか? それともアートだろうか?
5コマ目: 研究助成の申請研究者はどのように資金を申請するのか? どのような申請書を作成すると良いか?
STEAMライブラリー 未来の教室「トンボの紫外線反射特性」

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