近年、アメリカを筆頭に世界中でDEIの取り組みを推奨する企業が増えてきました。
DEIとは「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の頭文字からなる略称です。企業経営において、社員それぞれが持つ多様な個性を最大限に活かすことで、企業や社会にとってより高い価値創造につながる、という考え方です。
ブリタニカ・ジャパンは2020年から働き方改革を実施。働きやすい環境を整え、社員の満足度を上げるとともに、社員ひとり一人に合った勤務体制を優先し、社員の持つ多様な個性を引き出す事で高いパフォーマンスにつなげることを目指しています。
ここでは、ブリタニカ・ジャパンのDEIについてご紹介していきます。
今回は、子育てと仕事を両立をしながら仕事で高い評価を受けている、入社半年の矢島さんにお話を伺いました。
矢島さん 1992年東京都日野市生まれ 早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 数学・応用数理専攻を終了後、学校法人東洋高等学校の数学科講師、早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校 数学科教諭を経て、2022年にブリタニカ・ジャパンへ入社。現在は数学の知識を活かしながら教育機関向けの教材を制作。プライベートでは、1歳になる双子の息子たちの育児に奮闘するお父さん |
―ブリタニカに入社する前はシンガポールの高校で数学の教員をされていたと伺っています。教員を目指した理由と、なぜ日本の高校からシンガポールの高校へ転職したのか教えてください。
小さいころから数学が好きで、数学の研究者になるのが夢でした。しかし年を重ねるにつれ、自分には研究者としての才能がないのではないか?と思うようになりました。それでも数学は諦めたくない。そんな思いを抱きながら過ごしていた大学の後半くらいから、教員という仕事に就くことを考えました。教員は、数学を誰かに伝えられる仕事の一つだと思いました。
シンガポールは数学教育がとても進んでいる国だと聞いていたので、現地の教科書やカリキュラムが、日本のものとどのように違うのか自分の目で見たいと思いました。また、私が勤めたシンガポールの高校は大学の系属校でもありました。大学受験対策の問題演習だけにとらわれず、自由な授業設計ができる学校文化にも共感しました。自分自身の数学教育に対する視野を広げつつ、それを授業で実践したいと考え、シンガポールの高校への転職を決意しました。
―シンガポールで充実した教員生活を送られていたようですが、なぜ日本へ戻られたのですか?
大きな理由は子どもができたことです。しかも双子で嬉しさも2倍でしたが、大変さも2倍でした。私がシンガポールで仕事を続けたければ、妻もその生活を一緒に応援してくれたと思います。ただ、私が仕事をしている間に、異国の地で妻が一人で双子の世話をするということに不安もありました。安心して子育てをするためには親や友人のいる日本に戻った方がいいのではないかと考えました。シンガポールには、メイドさんを雇う文化があります。国外から来ている人も多く、経験豊富なメイドさんを雇うことで、子どもたちに国際感覚や多様性を自然と身につけさせると考えた時期もありました。ただ私たちの場合は、夫婦で子育てをしたいという希望もあり、シンガポールを離れることにしました。
―学校ではなく、ブリタニカへ入社を希望した理由を教えてください。
教員時代は授業で使う教材のほとんどを自作していたので、授業の合間に行う教材研究が日課になっていました。次第に、私自身の授業のための教材ではなく、日本全国の先生方や子どもたちに使っていただけるような教材の制作に関わりたいという気持ちが強くなり、異業種へのチャレンジを決意しました。
当初ブリタニカは紙の百科事典という印象でしたが、教育機関向けにデジタル教材を提供していることを知り、数学を活かした教材づくりができることを条件に面接に挑みました。たくさんの候補者がいる中、私を選んでくれたことに感謝しています。
会社から私の数学の知識を認めてもらい、私が作成したコンテンツが教材の一部として日本の数学教育に役立つことに誇りを持っています。DEIの観点から言うと、自分の個性を最大限活かして教育業界に貢献し、利益を会社にもたらすことが私の使命だと思っています。
―ブリタニカに入社されて半年経ちますが、職場環境はどうですか?また、お仕事の内容を少し教えてください。
私にとって仕事をする上でのプライオリティは、いかにやりたいことができるかでした。ブリタニカで働く中で、これまで学んできた数学の知識を活かして、デジタルで数学の教材を作成できることに魅力を感じています。
いまは、ブリタニカのデジタル百科事典に算数・数学の授業で使用できるコンテンツを開発中です。算数・数学は動的なコンテンツと相性が良いので、従来の百科事典的な読む教材ではなく、見て楽しめるような教材のほうが子どもたちの理解度が上がります・・・もっと詳しくお話したいのですが、これ以上は企業秘密なので(笑)詳しい内容はブリタニカのデジタル百科事典をご覧いただければと思います。
―ブリタニカは2020年に新社長が就任し、働き方改革を実施しています。社員の働きやすい環境を一番に考え、これまでにオフィス移転、フルフレックスや在宅ワークを導入しています。実際に働く中で感じることはありますか?
私にとってブリタニカで働く魅力は、まず数学の知識を活かしたデジタル教材を作成することですが、子育てと両立できることも魅力に思っています。自宅で仕事をしながら、横で双子の子どもの様子を見ることができるのは、私自身、心身ともに健康で仕事ができます。いま改めて気づいたのですが、私は幸せな生活を送っていますね。これもブリタニカの働き方改革のおかげだと思います。
―奥様は矢島さんの働き方をどう思われていますか?
妻は個人で音楽を仕事としていて、会社員よりも自由はききます。それでも出張など仕事で家を空けることもあり、私の在宅ワークや勤務時間調整が自由な点は喜んでくれています。自営業なので保育園に入ることが難しく、結果家にいる妻の負担が大きくなってしまうところでした。しかし私も自宅で仕事をすることで、妻も仕事ができる環境が実現しています。私は、妻には子育てだけでなく、音楽の仕事もプライベートも充実させてほしいと考えています。子育てに「女性だから」「男性だから」「妻だから」「夫だから」というカテゴリー分けはないと考えています。
DEIのエクイティ(公平性)にもかかわると思いますが、会社でも家庭でもそれぞれの得意な部分や個性を最大限に活かし、お互いを補うことで最高のパフォーマンスが得られると思います。
―これからのブリタニカに期待することはなんでしょうか?
ブリタニカは本社のアメリカをはじめ様々な国に支社があり、世界中の教育機関や子どもたちに教材を提供しています。グローバル展開している事はブリタニカの強みです。ブリタニカの教材が多様性に富んでいるのは、このような環境のおかげでもあります。
私には日本とシンガポールの教育現場の経験しかありません。今後は他の国の教育現場もぜひ見てみたいと思っています。世界中の素晴らしい授業をオンラインで見ることのできる時代です。せっかくのグローバル企業ですので、オンラインを通して世界中の教育現場に参加できる機会を作ってほしいと思っています。
―最後になりますが、次世代の子どもたちにどのような教材を提供していきたいですか?
これからは、アイデアを生み出せる人材を育てていくことが大事だと思います。新しいものを創造するとき、一番大切なのはアイデアを出せるかどうかです。その人その人のオリジナリティを形にすること、考えを言語化することが、アイデアを生み出すことであり、それはとても重要だと思っています。
従来の教科書は、知識・理解の観点が重視されていたように思います。算数も数学も、先人がつくった定義や定理をもう一回学んでいるのです。それは子どもにとっては新しいことかもしれませんが、歴史的に見れば新しいことを学んでいるのではなく、すでにある知識を入れているにすぎません。「入れた知識をどう使ってアイデアを出すか」が、大事なのだと思います。
アイデアを生み出せる人材を育てるには、従来の教科書だけでなく、探究心を掻き立てる教材が必要になります。子どもたちには、流動的で予測不可能な時代に立ち向かう力を身に付けてほしいと思います。そのために私は、ひとり一人がオリジナリティを活かしてアイデアを生み出すきっかけとなる教材を制作し、ブリタニカから提供していきたいと思っています。